研究課題/領域番号 |
16H05823
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
久保田 龍二 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70336337)
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研究分担者 |
出雲 周二 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30143811)
蓮井 和久 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (70198703)
吉満 誠 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (70404530)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウイルス / 感染症 / HTLV-1 / 日本 / 中国 / 台湾 |
研究実績の概要 |
H29年6月に中国福建省泉州市での第2回個別医療学会で、啓蒙活動の一環としてHTLV-1関連疾患の講演を行った。H29年8月に大阪で開催された第4回日本HLV-1学会学術集会に厦門大学および福建医科大学の研究者2名に参加してもらい、HTLV-1研究の最前線を勉強してもらい、研究打合せを行った。 日本人研究者が福建医科大学附属第二医院を訪問し、患者診察を行い神経学的にHAM類似である1症例を同定した。その後、抗体検査を行いHAMと診断した。本HAM患者とその家族2例のHTLV-1シークエンスを行い、大陸横断亜型であることを確認した。本症例は中国のHAM第1例目として論文発表した。また本症例の治療方針につき、指導・検討を行った。 中国に関しては、厦門大学を通じて泉州血液センターとの共同研究が確立し、HTLV-1陽性者の継続的な血液収集が可能となった。HTLV-1陽性者を血清学的に同定し、ウイルスゲノムシークエンスを解析中である。現在3例のHTLV-1全ゲノム解析結果が得られた。鹿児島大学では日本人のHAM122例、HTLV-1キャリア89例でウイルスゲノムシークエンス解析を行い、南九州のHAMおよびキャリアでは大陸横断亜型が多いことを明らかにして論文報告した。台湾に関しては国立台湾大学と共同研究体制を確立し、台湾HTLV-1陽性患者DNAを鹿児島大学に送付してもらいHTLV-1全シークエンスを行った。陽性検体は20例であったがDNAが少量また劣化しており3例のみが解析可能であった。さらに陽性検体を増やすために台湾大学を通じて台北献血センターとも共同研究体制を構築し、HTLV-1陽性検体を収集することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国福建省の厦門大学医学院、福建医科大学、寧徳市病院、泉州血液センター、および台湾の台湾大学および台北献血センターとのHTLV-1共同研究体制を構築できた。福建省では、寧徳市および泉州市がHTLV-1感染者の集積地域である事が明らかになった。また、共同研究機関や学会での講演などにより、中国福建省でのHTLV-1関連疾患に関する知識の普及を図った。中国人研究者が血清学的検査を行えるようになり、HTLV-1感染者とHTLV-1関連疾患を現地で調査・診断できるようになった。 中国福建省でATL患者が少なからずいることが明らかとなり、泉州市では中国で第1例目と考えられるHAM患者を診断し論文報告した。HTLV-1全ウイルスゲノム解析については日本の症例は目標数に達した。中国の症例に関しては泉州血液センターの協力を通じて現在3例が終了し、さらに陽性症例の検体収集を行っている。H29年より台湾大学の研究者と共同研究体制が構築され、3例のHTLV-1全ウイルスシークエンスを行ったが、まだ目標数に達していないため、台北献血センターとの共同研究体制を確立した。今後陽性検体の収集・解析が進むものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
日本人研究者が中国泉州市および寧徳市の中核病院と台湾の中核病院を訪問交流を通して、また泉州血液センターおよび台北献血センターと共同で以下の研究を進める。 1. 中国・台湾の研究者・医療従事者を対象とした講演をとおしてHTLV-1感染者・関連疾患の疫学、各疾患について説明し意見交換を行う。また研究者の人的交流を進める。2. 中国および台湾の共同研究者は、HTLV-1関連疾患と疑われる症例をリストアップし、抗HTLV-1抗体の血清学的診断を行う。日本側が参加して症例検討会の形式で診断の妥当性について検討する。また可能なら直接診察も行う。3. 過去に病理診断された悪性リンパ腫、血液塗沫標本について再顕し、日本の典型例と比較することにより、ATL 診断の根拠を日本と中国で共通化する。4. 中国福建省および台湾の抗HTLV-1抗体陽性率を調べるために、中国泉州血液センターや台湾台北献血センターで抗HTLV-1抗体検査を実施し、地域の抗体陽性率を明らかにする。5. 中国、台湾、日本のHTLV-1遺伝子配列解析を継続する。中国の臨床検体は国外持ち出しが禁止されているため、目標まであと17例サンプル収集し厦門大学で解析を行なう。台湾の検体は目標まであと17例サンプルを台湾大学および台北献血センターで収集し、鹿児島大学で解析を行う。最終年度であるH30年度は日本、中国、台湾のHTLV-1遺伝子の比較解析を目標とする。
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