研究課題
ガジャマダ大学との共同研究においては、同大学の肝細胞癌患者50名以上の臨床情報および画像情報を共有し、疫学、内臓脂肪やサルコペニア(筋肉量低下)などの評価を行っている。結果は今後国際学会報告を行う予定としており、国際誌への投稿も予定している。また、ガジャマダ大学および関連施設より得られたB型肝炎患者および対照患者の白血球抗原(HLA-DPタイピング)について解析し、HLA-DPタイピングがB型肝炎ウイルス排除・潜在性B型肝炎に関連することを明らかにし、国際誌への報告を行った。現在、抗ウイルス薬(核酸アナログ製剤)に対して耐性を有するB型肝炎ウイルスの集積を行い、今後解析を開始していく予定としている。アイルランガ大学との共同研究では、次世代シークエンサーを用いたウイルス多様性について、慢性肝炎と肝硬変肝癌患者の多様性の違いを検討した。その結果は現在国際誌への投稿を行っており、近く公表される予定である。肝炎ウイルスの創薬研究については、MTAにもとづいて薬用植物粗抽出エキスを現地から輸入した。現在、B型肝炎ウイルスゲノムを誘導発現するヒト肝がん細胞を用いて、ウイルス増殖阻害活性および細胞毒性について順次スクリーニング評価を行っている。現地への教育活動としては、平成29年9月にガジャマダ大学およびアイルランガ大学を訪問し、現地学生、専攻医に対しての教育講演を行うとともに、今後の共同研究にむけた現地医師らとの討議を行い、情報共有を行った。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度に引き続いて体制を維持し、研究協力の遂行を行った。ガジャマダ大学からは、肝細胞癌患者の臨床情報やCT画像の共有を行い、当初の予定通り内臓脂肪や皮下脂肪、骨格筋の定量的評価を行い、サルコペニアの評価をするとともに、予後との関連を評価した。平成30年度中に国際学会で発表が決まっている。また、抗ウイルス剤に耐性をもつ肝炎ウイルスについて、約20例の症例と検体の集積を行い、一部はMTAに基づいて日本への輸送を行った。アイルランガ大学からは、B型肝炎ウイルス検体の集積を行い、次世代シークエンサーを用いて病態の進行に関連するウイルス変異、多様性について解析を行った。結果については今年度中に国際学会での発表予定であり、国際誌への論文化を予定している。B型肝炎ウイルスの感染排除に関わる宿主因子の検討においては、インドネシア国の潜在性B型肝炎患者および対照者において白血球抗原(HLA-DP)の多型を解析し、特定のHLA抗原がウイルス排除に関わっていることを明らかにし、国際誌への報告を行った。肝炎ウイルスに対する創薬研究については、MTAにもとづき、インドネシア科学院からインドネシア産薬用植物抽出エキス46種を輸入した。B型肝炎ウイルスに対するウイルス増殖阻害活性試験については、昨年度に確立した薬剤スクリーニングのためのアッセイ系を用いて検討を行い、5種類の粗エキスに抗HBV活性がみられた。人的交流、教育については昨年度に引き続いて行っており、平成29年9月にガジャマダ大学およびアイルランガ大学を訪問し、共同研究についての報告、今後の検討を行うとともに、医学部生や専攻医に対しての肝疾患についての教育講演を行った。
平成29年度に引き続いて現在の研究体制を維持し、研究遂行に努める。インドネシア肝細胞癌患者の疫学情報の集積から、肝硬変肝癌に関わるリスク因子の抽出をはかる。また既に得られた画像情報をもとに、進行肝疾患とサルコペニアの関連、予後との関係を評価し、論文化をめざす。今後この結果をもとに現地医師とも連携して患者への啓蒙活動に役立てていく。抗ウイルス剤に対する薬剤耐性ウイルスについては、今後解析予定であり、インドネシアにおける薬剤耐性ウイルスの現状評価と問題点を評価し、フィードバックする。肝炎ウイルスに対する創薬研究については、抗HBV活性がみられた、5種類の粗エキスにつき、HBV増殖阻害の作用点解析を行うとともに、画分を精製し、活性責任物質の単離と同定を進めていく。B型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス効果とともにC型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス効果についても検討を行い、薬剤スクリーニングのためのアッセイ系を用いて抗ウイルス効果、毒性評価について検討し、基礎データの蓄積を行うとともに、将来的な医薬品への可能性を検証していく。進行肝疾患に関わる細菌感染症については、今後継続的な協議を行い、細菌性腹膜炎を有する進行肝疾患患者からの腹水培養を行い、免疫低下状態患者での細菌感染症の評価や薬剤耐性菌の広がり、抗菌薬の適正使用を行うための情報収集を継続していく。人的交流、教育については、これまでに得られた研究成果をもとにガジャマダ大学、アイルランガ大学への訪問と成果発表をもとに、現地医師への教育活動を行っていく。また現地医師を招聘し、今後の共同研究継続に向けての問題点や課題の抽出を行っていく。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)
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