研究課題/領域番号 |
16H05829
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
村田 真理子 三重大学, 医学系研究科, 教授 (10171141)
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研究分担者 |
及川 伸二 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10277006)
翠川 薫 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (20393366)
馬 寧 鈴鹿医療科学大学, 医療科学研究科, 教授 (30263015)
平工 雄介 三重大学, 医学系研究科, 講師 (30324510)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 上咽頭癌 / 中国南部 / DNAメチル化 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
中国南部ではEpstein-Barrウィルス(EBV)感染が関与する上咽頭癌の有病率が高く、我々はこれまでに当該地域にある広西医科大学との共同研究により、上咽頭癌患者と非癌患者の生体試料においてEBV-DNA、炎症関連DNA損傷塩基、microRNA発現などのバイオマーカーについて検討を行ってきた。平成29年度は、DNAメチル化を高精度に検出するために、次世代シークエンサーを用いてBisulfite Amplicon Sequencing (BAS)法により、各CpGのメチル化率を測定し、当該領域において癌患者群と非癌患者群のメチル化率は有意に差がある遺伝子を見いだし、候補遺伝子のDNAメチル化率が上咽頭癌患者をスクリーニングするバイオマーカーとなる可能性を示した(BMC Cancer 17, 489, 2017)。さらに、上咽頭癌組織でRERG (RAS like estrogen regulated growth inhibitor)遺伝子のプロモーター領域が有意にメチル化され、発現が低下していることを見いだした。簡便な酵素法を併用した定量PCR法により、上咽頭癌生検組織での有意に高いRERGのメチル化率を見いだし、スクリーニング方法として有意なROC曲線を得られた(J Exp Clin Cancer Res 36, 88, 2017)。現在、マイクロアレイやRNA seqの公開データベースを用いて、メチル化率差がある遺伝子を探索し、より検出精度の高いバイオマーカーを検討している。 タウリンは遊離アミノ酸の一種であり、抗炎症作用、抗がん作用があるとの報告がある。ヒト正常上咽頭および上咽頭癌から樹立された細胞株を用いて、タウリンのがん抑制効果について検討した。タウリンは上咽頭癌細胞の増殖を抑制したが、正常細胞株においては細胞毒性作用がほとんど認められなかった。また、タウリンは上咽頭癌細胞においてコロニー形成を抑制し、アポトーシスを誘導した。タウリンはPTENの発現を誘導し、Aktの活性化を抑制することでアポトーシスを誘導することが示唆された(論文準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNAメチル化定量方法について既に検討を終え、一部の候補遺伝子について生検試料を用いた検討で良好な結果を得ている。今後さらに血液などのより侵襲性の低い試料の核酸抽出方法の検討にはいっており、おおむね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1. 血液より循環DNAを効率よく抽出し、メチル化率の検出方法を検討する。 2. メチル化DNAマイクロアレイの公開データベースから得られる他の遺伝子候補を探索する。 3. 血液等の試料におけるバイオマーカー候補遺伝子のメチル化率を測定する。 4. 抗がん効果のある化学予防剤の上咽頭癌抑制機構を検討する。
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