研究実績の概要 |
本年度も順調にベラルーシ、ミンスクがんセンターより試料を収集できた。ミンスク市にある長崎大学代表部を通して、これまでと同様に、現地にてフォローアップ中の患者に来院を依頼し、採血した血液よりリンパ球を抽出、数回に分けて長崎大学へ輸送した。本年度も研究分担者が訪問し、共同研究者との打ち合わせ、リンパ球抽出に関してはクオリティコントロールを行った。また、古い症例に対しては、一部病理組織の再確認を行った。本年度は120例を収集し、これで総収集数は350例となり、試料収集数は当初の予定通りまで達した。 これらのDNAについて、以下の4つの遺伝子領域の6つのSNPについて遺伝子型の決定を行った:chr. 2 (DIRC3, rs11693806とrs966423 ), chr. 8 (NRG1, rs2439302), chr. 9 (FOXE1/PTCSC2, rs965513とs1867277), chr. 14 (NKX2-1/PTCSC3, rs944289)。チェルノブイリ原発事故後の放射線誘発と見られる494例の小児甲状腺癌、1074名の癌を発症していないコントロールの遺伝子型との比較解析を行ったところ、rs944289では、放射線誘発小児癌では見られなかった有意な相関が、散発性小児癌では確認された。その他のSNPについては、放射線誘発癌と散発癌での差異は認められなかった。このことは、NKX2-1/PTCSC3遺伝子の何らかの機能が、発癌の誘因によって異なった働きをしていることを示唆している。
|