研究課題/領域番号 |
16H05833
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
西園 晃 大分大学, 医学部, 教授 (70218155)
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研究分担者 |
アハメド カムルディン 大分大学, 医学部, 客員研究員 (00398140)
齊藤 信夫 長崎大学, 熱帯医学研究所, 研究協力員 (60626018)
山田 健太郎 大分大学, 医学部, 准教授 (70458280)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 狂犬病 / イヌ / 不顕性感染 / 東南アジア / 食習慣 |
研究実績の概要 |
東アジア・東南アジアではイヌ肉を食する文化があり、イヌ肉業者における狂犬病感染リスクが想定されるものの、実態調査や対策は行われていない。これらの国において、通常の咬傷曝露によらない狂犬病の新たな伝搬様式について、イヌ肉食との関わりから、社会学的、疫学的、ウイルス学的側面より明らかにし、適切な予防対策を構築することが本研究の目的である。 本年度は全体計画の初年度にあたり、対象国である、ベトナム、フィリピン、タイでのイヌ肉取り扱いに代表される非定型狂犬病曝露の可能性についての現場での調査を行うことを目的とした。ベトナムでは現地共同研究者であるハノイ市予防医療センターのNguyen KA博士の指示の下、ハノイ市Hoai Duc地区、Van Noi地区において、狂犬病に対する意識調査と感染予防策について質問紙表を用いたKAP(知識、態度、実践)調査を約300例に対して行うとともに、血清を採取し狂犬病に対するウイルス中和抗体価を測定した。イヌ肉の処理歴を有する者の中には、明らかにこれまでの狂犬病ワクチン接種歴がないにもかかわらず、狂犬病ウイルスに対する中和抗体価を有する例が確認されている。現在最終集計中であり結果を英文論文として発表する準備中である。一方、フィリピンでは、研究分担者である斉藤の指示の下、フィリピン国立サンラザロ病院に搬送・入院し、経過観察された467名の狂犬病患者の臨床的背景について、過去10年にわたりレトロスペクティブな調査を行った。その結果、調査した患者の98%まではイヌまたはネコからの咬傷曝露歴があり、非咬傷曝露の履歴があるものは2%以下であった。この中でイヌ肉の取り扱いがあったか否かに関する情報の提供は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画で主たる調査対象国として挙げたベトナムでは既に調査が開始され十分な数の症例のデータを収集することができている。特にフィリピンマニラにおける過去10年間の真性狂犬病患者に関するデータは、今回初めて明らかにされたものである。この中ではイヌ肉の取り扱いがあったか否かに関する情報の提供は得られなかったが、今後より詳細な聞き取り、質問紙での調査を行うことで、不顕性曝露の詳細を明らかにできることが期待された。その他海外研究協力者との連携、検体の収集、輸送なども滞りなく進展しているため、「②おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に則り研究を進展させるが、特にベトナムハノイ市で進行中の調査内容は、できる限り早期にまとめ国際的な学術誌の投稿を目指す。さらにハノイ市周辺のイヌ肉マーケットまで調査範囲を広げる必要があるかもしれない。フィリピンではこれまでにも国内でイヌ肉の取り扱いに関わり狂犬病に感染し、発症した例が散発的に報告されているが、イヌ肉摂取の食習慣派ルソン島以外の島嶼地域でより一般的と言われ、これら地域での調査範囲や対象を広げて検討を進める必要があろう。またタイでは当初の海外研究協力者が退職したため、新たな研究パートナーを人選する必要に迫られている。
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