研究課題
バングラデシュのヒ素汚染地域において、これまで主に皮膚症状を中心に健康影響が調べられてきた。本申請者は、これまでバングラデシュ北西部のRajshahi大学のHossain教授のグループと共同研究を行い、バングラデシュ南西部のヒ素汚染地域において、皮膚障害のみならず、呼吸困難、喘息、糖尿病などの多彩な症状が起こっている可能性を見出してきた。そこで、本年度は、1.ヒ素が呼吸機能・免疫能に及ぼす影響の調査、2.乳幼児のヒ素曝露実態調査、3.食品中のヒ素濃度の測定を計画していた。1.の呼吸機能とそれに関連する血中NO濃度の調査については、申請者本人もバングラデシュに行って実施することを予定した。しかし、2016年7月にダッカで起こった日本人殺害事件の影響で、現地に直接赴いての調査が困難となった。そこで、本年度は、共同研究者のRajshahi大学Hossain教授のグループに依頼し、Hi-checkerを用いた肺機能検査を先行して実施した。これまでは、主にバングラデシュ南西部のヒ素汚染地域での調査を行ってきたが、Rajshahi市の近郊にもこれまで全く調査されていないヒ素汚染地域があることがわかったので、その地域での試料採取も進めている。予備的な結果から、COPD、喘息ともにヒ素汚染地域で増加していることがわかった。血中NO濃度を呼気を用いて簡便に測定することができるNO Breathを購入したが、この機器は来年度の調査で使用することとした。2.の母親と幼児、小児におけるヒ素汚染の実態調査と、3.の水以外のヒ素摂取源の量的把握を行うことについては、すでに現地の共同研究者が、試料採取を開始している。これらの試料は、郵送等によって段階的に日本に送られてきており、洗浄、灰化、ICP-MSによるヒ素濃度の測定を実施している。
3: やや遅れている
2016年7月1日にバングラデシュのダッカで日本人が殺害されるテロ事件があった。そのため、2016年度は現地での調査を見送ることにした。なお、共同研究者であるRajshahi大学のHossain教授らが現地での試料採取等は先行して進めているので、大きな後れにはなっていない。
バングラデシュの政情も落ち着いてきたので、2年目の2017年度には現地に調査に行く予定である。また、初年度に購入したNO Breathは呼気中のNOを測定することで、体内で好酸球などが産生したNOの血中濃度を推測することができる。NO Breathは電池で動くので、電気のない村落での調査にも活用可能である。2017年度は、この装置を用いたデータ収集を行っていく予定である。また、さらなる試料収集も続けていく。Rajshahi大学はダッカから400 km以上離れていてドライアイスも入手できない場所であったため、これまで現地に直接行って試料を収集する必要があった。また、バングラデシュ独特の事情により試薬等を輸送するのが困難であった。しかし、初年度に様々な手段での試料や試薬の輸送が可能となるよう工夫することができたので、今後は試料、試薬の運搬も容易になるものと期待される。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 備考 (1件)
Environ. Health
巻: 16(1) ページ: -
10.1186/s12940-017-0231-7
PLoS One
巻: 12(4) ページ: e0175154
10.1371/journal.pone.0175154
http://p.bunri-u.ac.jp/lab10/