研究課題/領域番号 |
16H05837
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
和田 隆志 金沢大学, 医学系, 教授 (40334784)
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研究分担者 |
古市 賢吾 金沢大学, 附属病院, 准教授 (50432125)
原 章規 金沢大学, 医学系, 准教授 (70507045)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / 腎硬化症 / 国際比較 / バイオマーカー / 腎臓内科学 |
研究実績の概要 |
本邦では糖尿病性腎症は透析導入原疾患の第1位である。さらに、成長著しいアジア諸国においても、糖尿病そのもの増加とともに、重要な合併症である腎症の克服は重要な課題である。くわえて、超高齢社会を背景に、腎硬化症も重要な要素である。腎硬化症を背景とした新規透析導入ならびに既存の腎臓病に対する影響も増加している。本研究の目的は、透析患者、高齢者が増加しているアジア、オセアニア地域における高齢糖尿病性腎症、腎硬化症の予後調査、予後関連因子の解析、バイオマーカー評価、本邦との国際比較を行うことである。アジア・オセアニアにおけるCKD対策の共同行動組織であるAFCKDI(Asian Forum of CKD Initiative)ならびに当該諸国ですでに確立している台湾、オーストラリアなどのアジア・オセアニア諸国のコホートを基盤にする。そのうえで、アジア人種における糖尿病性腎症、腎硬化症の腎予後、心血管イベントならびに生命予後とそれらの予後関連因子の解析を共同で行う。さらに、予後検討に向けて、本邦の糖尿病性腎症の臨床、病理学的評価法による予後評価(Wada, et al. CEN 2014、Furuichi, et al. NDT 2018)を用いて、国際的にアジア系人種のコホート間で比較、検証を行なっている。すでに台湾コホートでの検証を元に論文を発表した(Chen, Wada, et al. CEN 2017)。平成29年度も日本腎臓学会、欧州腎臓学会、アジア太平洋腎臓学会議、アメリカ腎臓学会において共同研究者とのミーティングを重ねている。本研究の学術的な特色は、本邦の代表的なコホートから得られた成果を、いまだ十分に予後調査、リスク因子解析が行われていないアジア諸国にて国際比較、検証を行う点にある。本研究により、アジア、オセアニア地域の糖尿病性腎症、腎硬化症の病態、予後、関連因子、本邦発の評価法の検証、バイオマーカーの臨床的意義とともに本邦との国際比較が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに韓国、台湾、オーストラリア、ベトナムの研究者とこれまで会議ならびに随時メール会議にて協議し、国際共同研究体制を構築している。この際、毎回、研究計画の概要と具体的な実施計画について相互理解を得るべく議論を重ね、一層の理解を得ている。この協調体制はこれまで、共同研究体制を検討していた実績があり、その基盤を生かしたものである。 この研究の基盤となる本邦の糖尿病性腎症のデータベースの論文投稿ならびに受理が進んでいる。この間、本邦の13施設からの腎病理診断を行った糖尿病性腎症600例の予後解析(Furuichi, et al. NDT 2018)、糖尿病性腎症の日本の病期分類による解析(Furuichi, et al. Clin Exp Nephrol 2017)、腎生検で診断した腎硬化症の予後評価(Furuichi, et al. Clin Exp Nephrol 2017)かつ本邦の糖尿病性腎症レジストリー中間評価(Shimizu, et al. Clin Exp Nephrol 2018)など、体制基盤を強化した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度も引き続き、韓国、台湾、オーストラリア、ベトナムなどアジア・オセアニア諸国の研究者と連携強化のための研究ミーティングや随時のメール審議を行う。その上で、アジア、オセアニア地域での糖尿病性腎症の研究協調体制を推進する。今後もその基盤を強化し、糖尿病性腎症、腎硬化症に関する共同研究体制を確立し、一層の展開を進める。 各コホート内の糖尿病性腎症、腎硬化症の相互確認、腎生検施行例を含む必要な臨床データを引き続き収集する。特に、アルブミン尿、蛋白尿の測定結果の確認に加えて、GFR値の測定法ならびにその結果などデータを収集する。くわえて、本邦で確立した臨床的・病理学的な予後関連因子による評価システム、新規バイオマーカーを用いて、アジア・オセアニアコホートでの国際比較・検証を行う。 アジア諸国の研究協力者はAFCKDIの国際組織委員会のメンバーでもある。実際、当該諸国の研究協力者とはこれまでも良好な関係が継続し、共同研究を推進してきた実績がある。したがって、申請者らは当該諸国の協力者と連携を深めることにより、本研究の遂行が一層円滑となり、十分な成果が得られる見込みが高い。 さらに、国際会議におけるミーティング等の密接な交流に加えて、頻繁なメール会議により、本研究課題の取組みへの緊密な関係を構築、維持、発展させる。
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