研究課題
膜性腎症(MN、Membranous nephropathy)は、成人のネフローゼ症候群の主要疾患のひとつであり、我が国の調査では、予後は必ずしも良好とは言えず、MN対策は腎臓病対策の中でも最重要課題のひとつである。本研究では、アジア環太平洋地域におけるMNの実態解明、ならびに、将来的に当該地域においてMN診療ガイドラインを作成するための基盤情報の整備を目指している。本研究は、これまでに申請者らが欧米およびアジア各国の共同研究者と意見交換しながら実施してきた一連の膜性腎症に関する国際調査研究を前進および検証するものである。日本国内の調査研究(日本ネフローゼ症候群コホート研究(J-NSCS))によると、日本のMNは2年以内に70%が完全寛解し、治療はステロイド単独あるいはシクロスポリンとの併用が多くシクロフォスファミドの使用が少ないことが日本の特徴であるが、治療成績は諸外国と遜色ない。また、PLA2R抗体の陽性率は、中国や韓国と比べて日本で著しく低く、その理由として遺伝的背景の違い以外に住環境の違い、医療環境の違いなどが考えられた。一方、我々が2013年に着手したアジア環太平洋地域におけるMNの国際調査コホート研究(AP-MNCS、AP-MNCS-GENE)によると、各国のMNの診療レベルや患者登録システムが大きく異なることが判った。このように、我々は本年度を含むこれまでの調査研究によって、MNの診断、病因、病態、治療などに大きな国別差異があることを明らかにした。ASN kidney week 2016(Chicago)および名古屋で開催されたCKDフロンティアに参加したアジア環太平洋各国の共同研究者に更なる研究協力を要請した。今後、情報の収集と整理を一層進めて、アジア太平洋地域におけるMN診療の標準化に資する知識体系の整備を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
アジア各国のデータ収集に時間を要している。その理由として、腎生検を実施している国が韓国、中国、台湾、インドしかなく、これらの国々においても全国レベルでの患者登録システムが存在しない。そのため、個別の大学病院やクリニックからデータを集めるしか手段が無く、共同研究先研究者と議論してより効率良くデータを収集する手段について検討している。
日本腎臓学会および厚生労働省(難治性腎疾患に関する調査研究)と協力し、日本国内におけるMNの病因・病態、診断、治療、予後に関する情報収集をより積極的に行うとともに、諸々のアジア環太平洋各国についてもデータ収集を持続的に推進する。血中のPLA2R抗体やTHSD7A抗体、ならびに、腎組織におけるPLA2RやTHSD7Aの染色性を指標にした特発性MN診断法の標準化と国際化を推進する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)
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