研究課題/領域番号 |
16H05840
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研究機関 | 東京聖栄大学 |
研究代表者 |
竹内 二士夫 東京聖栄大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70154979)
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研究分担者 |
蕪城 俊克 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (00280941)
野口 博司 日本薬科大学, 薬学部, 教授 (60126141)
石川 岳志 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (80505909)
橋本 博 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (40336590)
濱崎 洋一郎 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (10180936)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ベーチェット病 / 強皮症 / 東アジア / HLA / 抗トポイソメラーゼⅠ抗体 / エピトープ / 計算化学 / 3次元構造 |
研究実績の概要 |
本研究では、HLAとの相関をベーチェット病(BD)及び強皮症(SSc)で検討し、計算化学的に病因候補蛋白やTopo1上のエピトープを推定して、そのサイトカイン産生能や自己抗体の免疫学的検討から病因蛋白等を解明する事を目的とする。BDは新たに10検体を収集、タイの新たな16検体と共にHLA分析を開始した。免疫学的検討では、ペプチドを合成し、2種の抗体を作成した。まず数名のBD患者検体を用いて、INFγ産生能の検討を開始した。ICS法でのサイトカイン産生能はタイで予備検討を開始。自己抗体検出は、実験条件の基礎検討等が行われている。SScでは独協医大の21症例について自己抗体を含めた臨床的解析を行ない、データーベース作成が進行中である。フラグメント分子軌道(FMO)法に基づく計算解析では、昨年度のドッキング計算の結果を利用してペプチド-HLA複合体の構造モデルを作成し、MICA-TMとHLA-B*51およびHLA-B*52との相互作用を検討した。B*51では63位のアミノ酸がNだが、B*52ではEであり、この差が相互作用エネルギーに大きく影響する事が分かった。しかしB*51だけがBDと相関を示す理由は明確に説明できなかった。分子動力学法での結合能の検討では、BDの候補ペプチドとHLA‐TCR -complexとの結合能について知見が得られ、更に検討中である。SScの候補エピトープとHLAの関連についても所見が得られ、現在投稿中である。B*51とMICA-TMの複合体のX線結晶構造解析では、大腸菌発現系を用いHLAα鎖とβ鎖の共発現系を構築し、Hisタグの有無で発現量を検証した。また、可溶化と希釈法によるリフォールディングを検討し可溶化条件を決めた。海外共同研究として前述の他、台湾、韓国では各国で疫学、免役研究を進める事となり、ペプチド、抗体を中心に技術的情報交換を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年12月に東大倫理委員会承認が得られた。本邦のベーチェット病(BD)検体は既存と合わせて186検体収集。再承認までに時間がかかり、HLA検体の採取と分析はやや遅れているが、分析、収集を再開、継続中。強皮症(SSc)は、獨協医科大学倫理委員会承認の下、21症例について臨床症状、自己抗体を中心に臨床データーがまとめられ、データーベース化がほぼ順調に推移している。タイでは倫理委員会承認が得られ、BDは順調に新たに16検体収集され、SSc検体についても免疫的研究に供する予定がたてられている。免疫学的検討のためペプチド、2種類の抗体をタイ等に送付し、日本、タイではサイトカイン産生の基礎検討はほぼ順調に開始されたが、自己抗体の基礎検討がやや遅れている。台湾からはDNAの輸送が不可能であるため、研究手法の検討会を行い、HLAや免疫的検討は韓国と同様自国で行う事となった。今後台湾とは、韓国と同様情報交換を中心に共同研究していく事となった。ペプチド結合能検討は、FMO法に基づく計算が行われ、63番目のアミノ酸が相互作用エネルギーに大きく影響している事が明らかになった。B*52と比べてB*51だけがBDと相関を示す理由を明確に説明できる結果は得られなかったが、研究は比較的順調に進行している。分子動力学的検討もタイとの共同研究で比較的順調に進み、TopoⅠ上のエピトープについての論文を投稿中であり、更に、HLA-MICA -とTCRの結合能のデーターも得られ、投稿準備中である。X線結晶構造解析研究ではHLAのα鎖とβ鎖の共発現系を構築し、Hisタグの有無で発現量が検証された。また、リフォールディングの塩酸グアニジンおよび尿素を用いた可溶化条件が決められ、比較的順調に進行している。全体として倫理員会承認の遅れや海外各国での研究費調達の都合などで研究はやや遅れてはいるがほぼ順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は前述に示したが、そのために5つの項目を柱に次年度も研究を進めたい。第1はベーチェット病(BD)、強皮症(SSc) の検体を増やし、HLAの相関、及び臨床データーベースを作成して臨床症状との関連を明らかにする事である。タイの検体数も増やし、自国で検討している韓国、台湾とは結果を持ち寄り情報交換を進める。第2は計算化学に基づく候補ペプチドに対する抗体やサイトカイン産生能を検討する免疫学的研究を、基礎検討に加えて少数例を用いて進める。その結果から免疫的研究手法を再検討し、症例数を増やす予定である。第3はHLAの役割を検討するため、フラグメント分子軌道(FMO)法研究を進める事である。石川は、MICA-TMとHLA-B*51およびB*52の複合体に関する分子動力学計算を実行し、トラジェクトリーから複数の構造を抜き出し、FMO計算による相互作用解析を実行する予定である。結果を統計的に解析することで、生体内での揺らぎの効果を部分的に取り入れることができ、単一構造のみでの相互作用解析では得られない知見が得られると期待される。第4は分子動力学法で相関するアリルのペプチド結合能の検討を続ける。タイとの共同研究では、新ペプチドの検討、HLAとペプチドに加えてTCRとの結合を考慮した検討も更に進める予定である。第5は、HLA- B*51:01の細胞外ドメインとペプチドとの複合体のX線結晶構造解析を行い、ペプチド認識メカニズムを解明する事である。橋本は、封入体として発現する目的タンパク質のリフォールディング条件を最適化すると共に、結晶化に向けた精製条件を検討する。具体的には、変性剤で可溶化後、希釈法と透析法によるリフォールディング条件を比較検討する。さらに、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーによってリフォールディングタンパク質の性状を評価し、結晶化に向けたタンパク質試料を調製する。
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