本研究では、中国南部に位置する広東省広州市と江西省がん州市を中心にエイズ非合併クリプトコックス髄膜炎の発症状況と、クリプトコックス抗原に対する宿主の免疫応答性にについて調査研究を実施した。 今年度は、中山大学医学部附属第三医院からクリプトコックス髄膜炎6症例とがん南医学院附属第一医院からクリプトコックス髄膜炎2症例、肺クリプトコックス症1症例が得られ、その臨床的背景について解析できた。前年度、エンドトキシンフリーの大腸菌を用いて作製することに成功した本真菌の主要なT細胞抗原98kDaマンノプロテイン(rMP98)に対する末梢血リンパ球の応答性について、インターフェロンγ(IFN-γ)産生を指標として解析した。陽性コントロールとしてコンカナバリンA(ConA)に対する応答性を調べた。併せて、健常者4名についても同様な検討を行った。rMP98、ConA刺激によるIFN-γ産生をもとにIFN-γ産生指数を計算したところ、クリプトコックス髄膜炎2症例、肺クリプトコックス症1症例において健常者3名よりも高い指数を示した。健常者2名では、高濃度のrMP98でのみ患者よりも低いながらも一定の指数が得られた。潜在性感染の存在を示唆する可能性も考えられた。これらの結果から、本検査がクリプトコックス症におけるIFN-γ-releasing assay(IGRA)となりうる可能性が示唆された。一方で、別の機会に実施したクリプトコックス髄膜炎6症例の解析では、ConA刺激を含めIFN-γ産生が検出できなかったため、検査の安定性を含めさらに解析を進める必要があると考えられた。
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