研究課題/領域番号 |
16H05845
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
中島 利博 東京医科大学, 医学部, 教授 (90260752)
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研究分担者 |
川原 幸一 大阪工業大学, 工学部, 教授 (10381170)
西 順一郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (40295241)
三浦 直樹 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (80508036)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キルギス / リウマチ熱 / バイオマス / 慢性呼吸器疾患 / 溶連菌感染 |
研究実績の概要 |
キルギスではRheumatic fever:(以下、RF)が未だに猛威を奮っている。さらに、顕在化しない RF の後遺症も含めたRheumatic heart diseases(以下、RHD) が食生活(肉食、ウオッカ)、環境因子(低酸素)と併せて当該地域での死因の過半数を占める 60 歳までの心不全の潜在的リスクファクターであることを報告していた。10年にわたる医療支援によりキルギスのほぼ全土を網羅する詳細なフィールド調査を行い、RF/RHD の有無、心エコーなど理学的所見、溶連菌など細菌感染症の頻度、家族歴など100を超える項目に関する調査を完遂していた。その結果より、バイオマス燃料による粘膜免疫の低下がその一因であることが推測された。本研究では、新たに呼吸器分野の専門家を加え、両者に共通する感染の遷延化・慢性化に対する宿主因子の探索を行う。 平成 28 年度は3回渡航して討論を繰り返し、選定した拠点集落に対して健康調査を行った。その結果、バイオマス燃料の粉塵、馬乳酒などの食生活が RF/RHD に関与している可能性が示されている。したがって、これらの保健衛生・生活インターベンションを行う拠点集落と行わない集落に分けて溶連菌感染率、RF/RHD の発症率などをモニターリングする。また、平成28年度の予備的結果によると、経年的に観察を続けている集落でRF/RHDの頻度の低下傾向が認められた(Omuruzakovaら投稿準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、拠点集落の選定も順調に進み、バイオマス燃料のリスクの可能性が示唆されるデータが得られた。また、何よりも重要なデータとして、RF/RHDの発症率の低下傾向が認められ、我々の活動の有益性が証明されたため。
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今後の研究の推進方策 |
環境因子としてのバイオマス燃料のリスクに関しては、今後も聞き取り調査を継続すると同時に、室内の大気汚染の状態として、PM2.5などの定量を行う予定である。 細菌側の因子としては、溶連菌由来 DNA の解析を行う。咽頭ぬぐい液などの患者由来のサンプルを キルギス―日本研究センター にて培養、分離後、DNA を抽出する。DNA の状態で日本に移送し耐性遺伝子の遺伝子配列を決定する。責任遺伝子変異が同定された場合には、簡単な PCR 型別法を開発し、キルギス国内で簡易タイピングを行えるようにする。さらに、溶連菌の M 型別に相当する emm 遺伝子型別を行い、RF を生じやすい型かどうかを検討する。 宿主側の因子としては溶連菌感染に関する免疫応答の代表的遺伝子HLA (HLA-B15, HLA-A9,、HLA-A30/31、HLA-A3, HDh2, HDR4)、ならびに B-lymphocyte alloantigen D8/17,Aldashav博士らがキルギス国民の低酸素による肺高血圧症の感受性遺伝子として Nature 誌に報告した亜鉛トランスポーター ZIP12 ,中島が発見した炎症の慢性化に重要な因子SYVN1 遺伝子を中心に行う。
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