研究課題
肺炎球菌感染症は乳幼児と高齢者の主な死因の一つである.また,肺炎球菌はインフルエンザウイルス感染後に続発する細菌感染症の主要原因菌である.高いコンピテンス能を有する本菌は近縁の口腔レンサ球菌からDNAを取り込み,薬剤耐性や病原性を獲得してきた.東南アジア諸国では肺炎球菌感染症による死亡率が小児で極めて高いにも関わらず,疫学情報は充分に整備されていない.本研究では,東南アジア諸国における肺炎球菌ならびに口腔レンサ球菌の臨床分離株の分子疫学的性状と病原性を解析し,肺炎球菌感染症の疫学情報と薬剤耐性化に繋がる遺伝情報を得ることを目的とした.タイの研究協力者の援助のもと,Mahidol University Dental Hospital において検体を収集した.患者からの検体を播種した血液寒天培地を嫌気的に培養し,α 溶血を呈するコロニーを分離した.カタラーゼ産生試験とグラム染色を行うと共に,オプトヒン含有ディスクを用いるオプトヒン感受性試験を行った.カタラーゼ陰性,オプトヒン感受性,およびグラム陽性と判定された菌株を選択した.さらに,胆汁酸溶解試験を行い,2% のデオキシコール酸ナトリウムを含む溶液中で溶菌する菌株を探索した.同様に,Mitis 群口腔レンサ球菌を分離するため,咽頭スワブを選択培地に播種し,培養を行った.得られたコロニーについて,グラム染色,溶血能試験,バシトラシン感受性試験,生化学試験を行い,口腔レンサ球菌を選別した.ミャンマーの Yankin Children and Yangon Children hospital においては,現地研究協力者との連携を開始し,東南アジア諸国における菌株収集を円滑に行うための土台を築いた.
2: おおむね順調に進展している
これまでにタイとミャンマーにおいて,臨床分離株の収集が開始されているため,今後の解析に充分な菌株数の確保が期待できる.
各国において,継続して菌株を収集する.菌株数が充分に収集されない場合,各国との研究打ち合わせに際して,研究協力者の援助のもと新たな共同研究先となりうる研究機関・研究者と交流を行う.研究協力が得られる場合,臨床分離株の新たな収集先として随時追加していく.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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