研究課題/領域番号 |
16H05848
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
武 洲 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (10420598)
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研究分担者 |
中西 博 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20155774)
西村 英紀 九州大学, 歯学研究院, 教授 (80208222)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 口腔健康 / 認知機能 / 疫学調査 |
研究実績の概要 |
中国チベット高原は、低酸素の環境であり、認知機能低下に関連する脳疾患の罹患率が高い。そこで本研究はアジアにおける口腔健康と認知機能の相関性を疫学的なエビデンスにより確立することを目的とし、チベット族中高年者を対象に(1)口腔健康と認知症の相関、ならびに(2)口腔健康と腸内フローラの相関を調査分析し、口腔健康の認知症への影響を総合的に検証する。
中国チベット高原(標高2300メートル以上)に居住する60-80歳の高齢者126名を臨床検査によるスクリンーグし、調査対象者の妥当性について検討を行った。臨床検査による脳実質病変が認められなかった80人を調査候補者と選択し、認知機能について調査を行った。その結果、中国チベット高原における調査候補者の認知機能はMCIに相当することが分かった。また、血清中の炎症性サイトカイン濃度を測定した結果、調査開始時点に比較して12か月後時点においでは血清中の炎症性サイトカイが増加する傾向が見られた。これらの結果から、今後の調査において経時的に認知機能ならびに末梢炎症評価を行うことの重要性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国チベット高原(標高2300メートル以上)に居住する60-80歳の高齢者126名を臨床検査によるスクリンーグし、調査対象者の妥当性について検討を行った。臨床検査による脳実質病変が認められなかった80人を調査候補者と選択し、認知機能について調査を行った。認知機能評価は、国際的に広く使用されているMMSE(Mini Mental State Examination)ならびにADAS-cog (Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive component)を用いて行った。また、末梢炎症は認知機能低下を促進すると報告されているため、ELISA法を用いて血清中の炎症性サイトカインであるIL-1β、TNF-α、IL-6ならびに抗炎症性サイトカインであるIL-10 ならびにTGFβ1の濃度を測定した。2回追跡評価を行った結果、調査開始時点ならびに12か月後時点においでは、MMSEスゴアが23~25で、ADAS-cogスコアは14~12.5であった。
これらの結果より、中国チベット高原における調査候補者の認知機能はMCIに相当することが分かった。ELISA法を用いて血清中のIL-1β、TNF-α、IL-6濃度を測定した結果、調査開始時点に比較して12か月後時点においでは血清中IL-1β、TNF-αならびにIL-6濃度がいずれも増加傾向が見られた。一方、血清中TGFβ1濃度の減少傾向が見られた。これらの結果から、調査期間において末梢炎症の変動可能性が考えられる。今後の調査において経時的に認知機能ならびに末梢炎症評価を行うことの重要性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに確立したマニアルを用い、玉樹チベット自治州立人民病院(標高3700メートル)にてチベット族70~79歳を調査対象とした調査を行う。年度前期(4月~9月)に、調査対象100名程度を抽出し、年度後期(10月~翌年3月)に(1)口腔健康、歯周病の精密検査、(2)認知機能評価ならびに(3)全身健康状態ならびに腸内フローラ検査を行う。なお、歯周病の性道検査ならびに認知機能評価は、前年度に実施した青海省腎病院の海外研究分担者、研究協力者らにより実施する。また、口腔健康の改善指導も行う。
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