研究実績の概要 |
平成28年度の研究では、正直さに対する潜在的な道徳的価値観を測定するための潜在連合テスト(Implicit Association Test, IAT)の作成を行った。IATは2種類の刺激をそれぞれ、意味的に一致もしくは一致しないカテゴリーに分類する課題であり、その反応時間の違いから、被験者がある対象に対して抱いている潜在的な好みの強さを測定できる実験パラダイムである (Greenwald et al., 1998, Journal of Personality and Social Psychology)。先行研究においても、例えば「黒人」-「悪い」の結びつきや、「暴力」-「悪い」などの連合の強さには個人差があり、反応時間の違いに反映されることが確認されている。本研究では、正直さと不正直さを示す刺激の分類を行うことで、潜在的な「嘘」-「悪い」の連合の程度の個人差を定量化することを目的とした。平成28年度までの研究において、この目的に合致する刺激をもとにIATを作成し、予備実験を実施したところ、概ね道徳的価値観の潜在的指標として利用可能であると考えられた。平成29年度はこの課題をもとに、行動実験によるデータ収集を実施する。IATで測定する潜在的な道徳的価値観に加え、標準化された各種質問紙で測定する個人差に関する指標が、心理実験によって定量化する嘘をつく行為の頻度にどのような影響を与えているかを検証することが主な目的となる。また、研究の進捗状況に応じて、脳機能にアプローチする実験にも着手する予定である。
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