研究実績の概要 |
平成30年度は、米国刑務所に収監中の囚人を対象とした、サイコパスの不正直さに関する脳機能画像研究について論文を発表した(Abe et al., 2018, Soc Cogn Affect Neurosci)。サイコパス傾向の測定にはPsychopathy Checklist-Revised (PCL-R)を利用し、fMRIによる脳活動測定中には(不)正直さを測定するためのコイントス課題を実施した。嘘をつく頻度が高い参加者(二項検定を用いて分類)に絞って反応時間のデータを分析したところ、サイコパス傾向が高いほど、嘘をつくかどうかの意思決定の反応時間が早い傾向が認められた。また、サイコパス傾向が高いほど、前部帯状回の活動が低いことも明らかとなった。前部帯状回は様々な機能に関わっているため、その解釈には慎重さが求められるが、認知的な葛藤の検出に重要であるとする見解がある。したがって、サイコパス傾向が高い参加者では、嘘をつくか正直に振る舞うかの葛藤が低下しており、躊躇せずに素早い反応時間で嘘をついている、という解釈が可能と考えられる。 上記の研究に加え、今年度はパーキンソン病を対象とした神経心理学的研究について論文を発表した(Abe et al., 2018, Front Neurol)。患者群及び健常対照群に不正直さを定量化する認知課題を実施した結果、患者群では不正直な行為の頻度が有意に低下しており、報酬系の機能障害が背景にあると考えられた。また、潜在連合テスト(IAT)を用いた不正直さに関する脳機能画像実験を行った。
|