織物は経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が多数並列化し,格子状に織り重なる構造を持つ.ジャカード織機はそれぞれの格子点での経糸と緯糸の上下を任意に決定して,自動で織物を織ることができる.織物の格子パターンをデザインする問題は,ディジタル画像処理とは親和性が高く,我々は本研究課題開始時までに織物パターン合成のための織物画像処理を提案してきた.本研究でもこの織物画像処理の技術をさらに発展させる. さらに織物の新しい展開として,電極や導電性繊維を織物に織り込むことで機能性を持つ織物を提案する動きがある.導電性を持つ織物では,縫製することで持続的な生体信号計測が可能な着衣を作り出すことができ,医療・介護・スポーツ・インタフェースなどでの活躍が期待されている.本研究課題では,我々がこれまでに進めてきた美的織物作製のための画像処理を,導電性織物の機能性を高めるために転化することを目指す.導電性織物に以下の2点の機能を追加する. (1)自動作製 特定位置以外での絶縁性を保ちつつ,自動作製可能なパターンを開発する (2)感度向上 位置・信号強度の空間的な分解能を高める(符合化織の提案) 最終年度である4年目は導電性織物と美的織物作製の両面で研究成果が得られた.心電図計測のための織物電極の開発を進め,想定の機能が実現できていることの検証を進めた.山梨県産業技術センターや大学が進める地方創生推進事業とも連携して,地域織物関連企業などへの広報を行い,産業応用やさらなる連携先の模索を進め,一部は製品化に貢献することができた.
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