研究期間の最終年度とその繰越期間にあたる2019年度-2021年度においては,反射型光センサアレイを用いた頭部装着型ディスプレイ内部での表情認識技術について,国際会議での実演展示を通じて多数のユーザでの実証実験を行うことによって,多様性を持つ実験参加者のデータセットを収集し,提案手法によって頑健に表情認識を行うことが可能であるかを検証した. 実際のデータセットの収集は,コンピュータグラフィックスとインタラクティブシステムに関する学術分野において世界で最も参加者が多いと考えられる国際会議ACM SIGGRAPHにおける実演展示の一部として参加者の同意を得て行った.このデータセットを用いることで,皮膚の反射特性の異なる多様なユーザにおいても提案手法を用いた表情認識が可能であることを検証することができた.更に,収集したデータセットの分析において,表情とセンサ値の時間変化を検討したところ,同一表情のデータでもセンサ値の分布に経時的な変化が見られ,適応的学習の有効性が示唆された. また,前年度からの表情認識の精度向上を行うための試みを更に進め,視線方向に追加して頭部方向の異なる各表情の反射型光センサ値の分布を収集したデータセットを構築し,多様な訓練データを持つことにより表情の認識精度が向上するかについての検証を行った.こうした検証を通じて,頭部方向及び視線方向の多様性を踏まえた識別器を訓練することにより,表情認識の頑健性を高められることを実証した.
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