研究課題/領域番号 |
16H05871
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
多田 昌裕 近畿大学, 理工学部, 講師 (40418520)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者 / 高齢ドライバー / 運転技能評価 / リアルタイム安全アドバイス提供 |
研究実績の概要 |
本年度は,ウェアラブルセンサとスマートフォンを用いたリアルタイム安全運転アドバイス提供システムのプロトタイプ開発を行った.このシステムは,小型の装着型センサ2つとスマートフォンからなり,センサを取り付けた帽子を被ってもらうことで運転中の安全確認を計測するとともに,車両に取り付けたセンサで車両挙動を計測する.これらのセンサ情報とGPS情報とを組み合わせて運転行動を計測・評価し,もし運転に改善すべき点があればリアルタイムに安全アドバイスを提供する仕組みである.申請者らは,ノートPC上で動作する上記システムの試作版を,自動車教習所で実施されている法定高齢者講習同等講習に試験的に導入し,70歳~74歳の日常的に運転している高齢者72名による実証実験を行った.実証実験では,運転中にリアルタイムアドバイスを提供する群(36名)と提供しない群(36名)に分け,リアルタイムにアドバイスを提供することで運転行動に改善が認められるか検証を行った.その結果,リアルタイムにアドバイスを提供する群の運転行動評価点(試作システムによる評価点,以下同じ)は,アドバイスを提供しなかった群よりも有意に高くなり(p<.01),リアルタイムに安全アドバイスを提供することが,高齢者の運転行動をある程度改善することにつながることがわかった. さらに,本年度は非高齢者10名の自転車乗用中と歩行中の視線移動データをアイカメラで計測し,ウェアラブルセンサで計測可能な首振り行動との関連性を調査した.その結果,自転車乗用中,歩行中ともに,アイカメラで検出した安全確認に関わる視線移動の8割以上をウェアラブルセンサで検出可能なことを確認した. 以上に加え,研究室で保有する600人以上の高齢者の公道上運転行動データベースを解析した結果,高齢者は特に車両側方や後方への安全確認が不足しがちであることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自動車向けリアルタイム安全アドバイス提供システムプロトタイプの開発は完了し,当初予定よりも多い72名の高齢者による実証実験も実施できた.また,歩行中,自転車乗用中の人間行動センシング技術の検討や,事故リスクの高まる場所・状況のデータマイニング技術の開発もほぼ予定通り進んでいるため.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,今後は今年度得られた知見に基づき,(1)スマートフォン上で日常の交通行動(歩行,自転車乗用,自動車運転)の計測,解析・認識を同時に行うことが可能な環境の構築,(2)事故リスクが高まる場所,状況を抽出するヒューマンプローブ技術の開発,(3)自動車運転者向けの運転行動評価アルゴリズムを歩行者,自転車に適用できるよう拡張し,歩行者,自転車向けのリアルタイム安全アドバイスシステムプロトタイプの開発,を行っていく.
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