人工関節の有限要素解析と人の筋骨格解析を統合したモデルを用いて、モーションキャプチャ計測により得た運動データを基に、運動中に生じる筋活動度と人工関節にかかる負荷を同時に計算することができる。このモデルを使用し、人工関節置換術の前に人工関節を装着した際の負荷を予測することができる。これを応用することで、個人に適した人工関節の形状を最適計算することが期待できる。 本年度は、筋骨格解析・有限要素解析の統合モデルを用いたシミュレーションにおいて、患者個人のMRI画像情報に基づいてシミュレーションモデルのパラメータを個人に合わせたものに調節し、個人の特徴に合わせた歩行シミュレーションを実現した。また、そのシミュレーション結果に基づき、患者個人に合わせた人工関節の設計法を提案した。 本研究で取り組んでいる人体モデルは、従来の光学式モーションキャプチャによる運動計測だけでなく、近年発展が目覚ましいビデオ画像ベースのモーションキャプチャを用いることで、応用先が広がると考えられる。そこで、今年度はビデオモーションキャプチャによる運動計測から、特に膝関節への負荷を推定する技術についても取り組んだ。 患者個人に適した人工関節の形状を最適化する計算には、シミュレーションモデル、特に形状の連続変形の計算を高速化することが求められる。これまではその計算に商用の有限要素解析ソフトを用いてきたが、計算の高速化のために別のソフトウェアやアルゴリズムを用いることを検討し、例としてロッドや梁のような形状の変形を高速に計算する方法を研究した。
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