研究課題/領域番号 |
16H05875
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉元 俊輔 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00646755)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電気刺激 / 触覚イメージング / 触覚フィードバック / 遠隔操作 / ロボットハンド |
研究実績の概要 |
本研究課題では,ユーザの動作に同調して操作が可能なロボットハンドの操作性を高めるため,非高速な動作計測と多自由度な触覚フィードバックの実現を目指し,電気的な手指の動作・力計測,神経束の電気刺激による受容器部位への触覚生成技術の確立による,同調型ロボットハンドのための電気触覚リンクの形成に取り組んでいる.本年度は,(1) 圧力の時空間分布計測方法の開発とその評価,(2) ロボットハンドの製作に取り組んだ.(1) に関しては,接触圧力に応じて電気接触抵抗が変化する検出機構と計測電位から圧力分布を推定する,電気機械境界インピーダンストモグラフィという手法を考案した.この手法は従来の触覚イメージング手法よりも推定精度が高く,かつセンサ部の製造が容易であるという特長を有しており,ロボットの体表に貼り付けることで人工的な皮膚の機能を付与できることを確認した.また,電気接触抵抗の計測による手法のみならず,指の血流変化から接触力を推定する手法,指の動作と色変化から接触対象物の弾性率を推定する手法の開発に成功し,人と人,人とロボット,人と環境の相互作用を簡便に定量化する触覚センシングについて一定の成果が得られた.(2) に関しては,既存のロボットに触覚センサを貼り付けることで圧力分布を可視化できるようになったことから,ロボットハンドは比較的安価な市販品を利用するように方針を変更した.指の動きは6自由度と単純であるものの,手指の動きに同調した動作を実現できるよう課題を抽出し,計測と制御部の設計を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の実施計画では,平成28年度から平成30年度の間で五つの項目を設定し,29年度はそのうちの二つの項目について取り組んだ.そのうちの圧力の時空間分布の計測については想定以上の成果が得られ特許出願に至ったこと,またくつかの異なる方法を試すことで周辺技術に関する成果が得られたことから順調に進展していると考えられる.また,もう一方のロボットハンドに関する取り組みについても計画通りの進展が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
今後はロボットハンドの動作制御と感覚フィードバックシステムの開発に取り組む.ユーザが手指を動作させる空間には物体が存在しないのに対し,ロボットハンド側では対象物との接触によって動きが制約される.したがって,両者の空間には非整合性が生じると考えられるため,その補償を行う必要がある.その方法として,ユーザにはHead Mount Display (HMD) を用いてロボットハンドの映像を提示し,ロボットハンドには対象物への侵入を防ぐ制御を加える.ロボット側の映像をユーザ視点で提示するため,頭部の姿勢に応じて視線が変化するステレオカメラシステムを導入する.また,ロボットハンドで計測された指先の応力分布は電気刺激による触覚提示装置によってユーザにフィードバックされる.その空間分布は電流密度の制御により表現し,力の大きさは電気刺激のパルス周波数により表現する.これらの感覚フィードバックモデルの効果を確認するため,幾つかの物体操作タスクに対するユーザの知覚実験,行動評価を行う.
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