研究課題/領域番号 |
16H05877
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
西出 俊 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (30613400)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経回路モデル / 深層学習 / 発達学習 / ロボティクス |
研究実績の概要 |
平成30年度はロボットの描画発達において,単純な描画対象からより複雑な描画対象へと移行する課題に取り組んだ. 具体的には,以下の3つの課題に取り組んだ.1. 部分描画系列からの描画図形予測,2. ペンの持ち上げに対応可能な学習方法,3. 6自由度ロボットアームを用いた描画発達モデルの基盤構築.1.について,神経力学モデルMultiple Timescale Recurrent Neural Network (MTRNN)を用い,描画対象となる一部の系列から全体の系列を予測し,生成することに成功した.実験は実ロボットではなくシミュレーションによって行ってきたが,モデルの解析を通じ,描画図形の力学的性質と生成性能の関係性を検証した.2.について,これまでは一筆書き可能な描画図形のみを用いて実験を行ってきた.モデル内でペンの状態を予測するニューロン群を付加することでペンの持ち上げタイミングも同時に学習・予測することが可能となった.実験では画の間でペンの持ち上げが必要となる漢字を対象とした学習を行い,漢字の執筆系列から漢字を認識することや,モデルを用いて漢字の系列を生成することが可能であることを確認した.3.について、これまで用いた実験ではロボットの2自由度のみを用いてきた.そのため,ペンが描画キャンバスから離れるという問題点を扱わなかった.6自由度のロボットアームにモデルを実装することでペンが描画キャンバスから離れた際にモデルの予測値でデータを補間する手法を導入した.本実験システムにおいても描画発達モデルの基盤を構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では,単純な図形から複雑な図形へとプリミティブを発達させることでロボットの描画能力を発達させることを考えていた.しかし,多自由度アームロボットで実験を行った際,ペンが描画キャンバスから離れることがしばしば見られた.平成30年度はこれを解決することに注力することにした. 研究成果では,描画発達の実応用における課題の解決の糸口を発見することができた.現時点では各要素技術を個別に開発しており,それらを統合することが今後の課題となる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方法としては,これまで構築した要素技術をロボットに実装することを考えている.具体的にはこれまで,ロボットアームの描画は平面上の動きのみで実験を行っていたため,ペンの持ち上げ・描画中の状態を予測しながら,描画学習を行う.その際,各描画ストロークをプリミティブとした学習をモデル内で行うことで,階層的に情報を構造化した学習方法を実現し,従来の学習手法と比較することで手法の有効性を確認する.また,直線から基本図形,基本図形から複雑図形とプリミティブが発達し,獲得される枠組みを実装する.これらを6自由度のロボットアームを用いた実験系によって検証することで,より高度な描画機能の獲得を目指す. 上記の研究を遂行すると共に,用いるMTRNNの学習性能の向上についても検討する.具体的には時系列データを階層的に学習する際,まずは単純な系列から学習し,足場作りを行うscaffoldingのような効率的な学習手法を導入する.本モデルでは,ネットワーク構造が階層的になっており,このような学習手法を導入することで,情報の階層性がより明確に自己組織化できると考えている.
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