本研究では、熟練した医師の経験と勘を頼りにした、いわゆる「名人芸」といわれる客観的には伝えがたい技術を経験的に教え、トレーニングを行ってきたこれまでの教育システムを、根本から刷新する事ができる革新的な内視鏡外科手術教育支援システムの開発を目的とした。本システムは手術工程解析の自動化による新しい手術手技評価方法とディープ・ラーニングを用いた新しい情報処理システムにより、他の外科医が行った手術を含む、全ての症例経験を自身の症例経験として共有し、「無駄のない手術」を実現するための外科教育システムである。 平成28年度は、「無駄」とは何かを明らかにするために、手術工程解析を実施できる環境構築と、臨床医の縫合結紮データを収集した。手術工程解析では、画像処理技術とビッグデータ解析技術を融合させ、ディープ・ラーニングを活用することで外科医の術中の縫合結紮の動作を画像のみから軌跡を取得し時系列データに自動に落とし込む仕組みを開発した。また内視鏡外科学会と連携し、約280名の外科医の縫合結紮データを収集した。平成29年度は、約280名以上のデータ解析および統計処理を自動で行うアルゴリズムを開発した。平成30年度は、上記研究成果を学術論文として発表すべく取りまとめ、学会発表を実施した。 また実施期間を通じ、当該研究の普及と拡大を目指し、日本外科教育研究会にて積極的に研究会の運営に携わった。
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