研究課題
本研究では世界で最も風化作用が活発なヒマラヤ水系の最下流部の河川水と地下水を調査対象として、岩石の主要構成元素の安定同位体比から、ケイ酸塩風化、炭酸塩風化、二次鉱物の生成など二次作用の履歴から化学風化の様式を読み解くものである。今年度の主要な成果として以下の4点を明らかにした。(1)ベンガル平野の地下水の同位体組成から、その溶質が上流の高山地帯からに由来するものではなく、多くは降雨と堆積物の反応でもたらされた。(2)50mよりも深い地下水は数千年以上の滞留時間を有するが、その化学組成がケイ酸塩鉱物の溶解反応の影響を多く受ける。(3)長い滞留時間を経た地下水は固相(岩石/鉱物)と液相(溶存態)の同位体がより近くなるため、相合な風化反応(congruent weathering)が進行する。(4)地下水の同位体組成の平均値はガンジス・ブラマプトラ川の平均値と誤差の範囲で一致することから、化学反応は河川水もベンガル平野内の地下水も定常状態にある。これは平野部は滞留時間が長いため化学風化が完全に進行しており、活発な岩石の削剥が起こる高山地帯とは反対の様式であるとする従来の説を支持せず、高度が低い氾濫原においても削剥が活発な上流部と同様に化学反応が溶質の供給量を制限するタイプの風化が進行することを示唆する。このような風化様式は気候変動で気温・降雨量が変化した時に溶質フラックスが影響を受ける。温暖湿潤な気候下で上流部の削剥が進む場合、氾濫原が拡大し溶質の供給量が増加するため、気候変動に対して負のフィードバックをもつ可能性がある。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Aquatic Geochemistry
巻: - ページ: 1-23
10.1007/s10498-020-09374-y
Frontiers in Earth Science
巻: 7 ページ: 1-9
doi:10.3389/feart.2019.00124