研究課題
本研究は4年計画で、平成28年度前半に実験室のクリーンルーム化や同位体分析のハイスループット化を整備し、並行してアイスコア試料のカットや表面切削によるコンタミの除去を行う予定であった。予定通り本年度は、北海道大学低温研究所の低温室およびクリーンルームにおいて、アイスコア試料のカット及び表面切削によるコンタミの除去を行った。分析準備の整った試料を陰イオン濃縮・分離・回収装置により硝酸・硫酸イオンをそれぞれ分離を行った。すでに全試料の3/4のカット・表面切削を終えることができ、適宜イオン分離を行っている。本システムは自動制御できるが、イオン濃縮が4 mL / minと流速に制限があり、1日2試料程度の分離が限界であった。現在はこの作業を進めつつ、分離ができた硝酸の安定同位体組成の分析を進め、予察的な結果を得ている。特に、同サイトの表層の雪の硝酸の窒素同位体比が他地域と比較して低いことを発見し、同サイトのイオンが沈着後の消失を受けていない保存性の高い試料であることを示唆した。本年度は、申請者が開発した脱窒菌法-パージ&トラップ-ガスクロマトグラフ-放電分解-IRMS法を用いた硝酸の三酸素及び窒素同位体の自動分析装置に関する論文を発表した。また、本研究と深く関連する南極の大気エアロゾルの三酸素同位体組成に関する論文を発表した。この論文では、南極沿岸部では、硫酸と硝酸の三酸素同位体組成が光化学オキシダントの寄与を反映していたこと、冬期に蓄積された硝酸の放出が、春先の南極の大気酸化環境を変化させていたこと、氷床コアの三酸素同位体組成解析による大気酸化環境の復元に期待できること、を主に明らかにし、プレスリリース(『南極大気の歴史をひも解く新たなアプローチ ―硫酸と硝酸の三酸素同位体組成の変動から―』)も行った。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の予定では4年計画の2年半程度を使って分析を行う予定であった。しかし、アイスコアのカット・表面切削が予想以上の処理速度で進めることができたため、ほとんどの処理を終了している。また、共同研究者を中心に進めているイオン成分の基本解析論文に関しても投稿を終え、現在査読中である。このため、初年度としては十分に研究を推進していると言える。
当初の予定を繰り上げて分析を進める。得られたデータの解釈を進め、論文化を加速させる予定である。また、3年目より開始する予定であった大気化学モデリングの予定を早める予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 8件、 招待講演 1件) 備考 (4件)
Atmospheric Chemistry and Physics
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