研究課題
本研究は4年計画で、氷床コアの分析・解析によって過去の人間活動と窒素・硫黄循環や大気酸化過程の変遷を復元することを目的としている。当該年度は、前年度に引き続き北海道大学低温研究所の低温室およびクリーンルームにおいて、アイスコア試料のカット及び表面切削によるコンタミの除去を行った。分析準備の整った試料を陰イオン濃縮・分離・回収装置により硝酸・硫酸イオンをそれぞれ分離を行った。これにより、全試料の硝酸の安定同位体組成の分析が終了させた。特に、同サイトの表層の雪の硝酸の窒素同位体比が他地域と比較して低いことを発見し、同サイトのイオンが沈着後の消失を受けていない保存性の高い試料であることを示唆した。また、窒素同位体組成の変動を各国のNOx排出インベントリと比較した。この結果、極域の氷床コアに保存される硝酸の窒素同位体組成から過去の人間活動が復元できることが明らかとなった。また、硝酸の三酸素同位体組成に関しては、夏と冬の季節変動が観測されたが過去60年間で大きな変動は観測されなかった。また、計画後半を見据え全球大気化学輸送モデルGEOS-Chemを本計画で購入したサーバーに導入し、計算ができる環境の構築を行った。本年度は、北海道大学低温科学研究所を中心に行ったイオン濃度の過去60年間の記録に関するコミュニティペーパーを出版しプレスリリースを行った他、前述したような雪による大気NOxの放出の寄与が高い東南極域における調査の結果を出版した。
1: 当初の計画以上に進展している
アイスコアのカットや表面切削がすでに終了し、硝酸の同位体分析に関して終了することができた。また、計画後半にむけてサーバーの導入やモデルの構築が順調に進んでいる。さらに、関連して進めていた南極の表面雪の分析から硝酸の光分解反応と積雪の涵養量の関係を明らかにすることができた。このことは、グリーンランドSE-Domeのような涵養量の高い地域では硝酸はよく保存されるが、積雪量が少ない地域では硝酸が分解されさらにd15Nが上昇することがわかった。
硫酸の三酸素同位体組成の分析を進める。また、大気化学輸送モデルと組み合わせることで、過去の窒素・硫黄の大気放出とエアロゾル生成・輸送を比較関連する。また、グリーンランドや南極のような局地以外にも山岳氷河が存在しており、これらの同位体組成を分析し比較する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 10件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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