研究課題
本申請課題の目的は、ヒ素代謝(メチル化)酵素であるAS3MTの活性とヒ素代謝物組成、毒性影響にはどのような関連性があるのか?、AS3MT遺伝子多型・スプライシングバリアント(SV)がどのようにヒ素代謝能力に作用するのか?、そして各人種のAS3MT遺伝情報からヒ素代謝能力を予測できるかどうか?、について究明することである。本年度は、まずヒ素汚染のモニタリング調査をミャンマー北部とバングラデシュ西部で実施した。分析の結果、地下水からWHOの飲用水の安全基準値を超過する濃度のヒ素が検出された。とくにバングラデシュでは基準値の300倍を示す地下水もあり、ヒ素汚染の深刻度が明らかになった。ヒトの曝露についてみると、地下水ヒ素汚染地域の住民の毛髪中ヒ素濃度は皮膚障害の閾値を超えるレベルであった。また、バングラデシュでは実際に角化症・皮膚がん等の皮膚障害を患っている人たちも多くいた。一方、ミャンマーの地下水、ヒト毛髪は、ヒ素だけでなくウランも高濃度であったことから、ヒ素・ウランの複合曝露の影響が懸念された。AS3MTスプライシングバリアントについては、RNAのコンディションが悪く、明瞭な結果を得ることができなかった。これについてはさらに精製する、再度RNAサンプルを入手する等の手段を考えている。遺伝子多型については、ミャンマー人、フィリピン人、ガーナ人について行った。その結果、ミャンマー人とフィリピン人のヒ素代謝がアジアタイプ、すなわちメチル化能が高いことが判定された。興味深いことに、今回調査したガーナ人はアフリカタイプではなく、アジアタイプであった。ガーナの中にも多民族が存在していることから、今回調査したガーナ人でも、ヒ素代謝の強い民族を選択的にサンプリングしていた可能性もある。いずれにせよ、サンプル数が少ないことから、さらに大規模な調査を進める必要がある。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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