研究課題
DNA二重鎖切断(DNA double-strand breaks: DSBs)を適切な修復経路により修復することはゲノム恒常性を維持する上で不可欠である。現在までに、DSB修復の分子機構はこれに関与するタンパク質の同定に始まり、エピジェネテックな制御を含むクロマチンレベルにおける制御が解明されてきた。一方、ゲノムDNAは核内においてPML body等の核内構造体と混在しており、これらの核内構造体がDSB修復及び、応答に果たす役割には解明すべき点が多く残されている。本研究ではnuclear speckleの新規構成因子として見出した脱ユビキチン化酵素USP42の機能解析により、nuclear speckleがDSB修復及び、DSB依存的な転写抑制に果たす役割の解明を目的とする。本年はUSP42のDSB修復及び、応答における機能解析を行った。USP42が機能する修復経路の同定を特異的なアッセイを用いることにより相同組換え修復(homologous recombination: HR)であることを明らかにした。さらに、USP42のノックダウンはHRの初期反応であるDNA end-resectionに遅延をもたらした。また、USP42はHR因子であるMRN複合体(MRE11-RAD50-NBS1)と複数のドメインにおいて相互作用することを見出した。これらに加えて、USP42の発現は転写レベルで細胞周期依存的に制御され、S期後期からG2期にかけてピークを示すことを明らかにした。これらの結果から、USP42が新たなHR促進因子であることが示唆され、核内の局所に位置するゲノム領域がHRにより優先的に修復される機構が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年はUSP42のDSB修復及び、応答における機能解析を重点的に行う予定であった。その観点からはUSP42の機能するDSB修復経路の同定、その経路における分子機構の解析を行う為の相互作用因子の同定、及び他のHR因子と同様の細胞周期依存的な発現制御の存在を明らかにすることが出来た。これらの結果から、USP42が新たなHR促進因子であることが示唆され、核内の局所に位置するゲノム領域がHRにより優先的に修復される機構が示唆された。一方、USP42のドメイン解析に関しては想定よりも詳細な解析が必要であることが明らかになった。
今後、USP42のドメイン解析を詳細に進める。これに加えて、発展的な研究であるnuclear speckleのDSB修復への影響を検討するために、nuclear speckle因子をsmall interference RNAによりノックダウンし、HRを特異的に検出するアッセイにより、新規のHR制御機構の存在を検証する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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