研究課題/領域番号 |
16H05890
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
内村 有邦 大阪大学, 生命機能研究科, 招へい教員 (20513063)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 突然変異 / 生殖細胞 / 後世代影響 / 動物モデル |
研究実績の概要 |
化学物質や放射線等の影響により誘発される生殖系列の変異が、後世代に及ぼす影響を理解することは重要である。しかしながら、生殖系列で発生する変異の後世代影響を体系的に理解するための実験モデルは存在しない。本研究では、私たちが、これまでの研究で構築してきた2種類の「突然変異蓄積マウス系統(野生型:9系統、変異率が20倍に上昇したMutator:18系統)」を利用することで、生殖系列で発生する変異の後世代影響を体系的に理解するための新しい実験モデルの構築を図る。 平成28年度の研究では、以下の点にフォーカスして解析に取り組み、それぞれ成果を得ることができた。 (1)生殖系列を通じて、どのような変異がいつ発生するか? 変異蓄積系統に蓄積された変異、合計200箇所について、世代を溯って、変異の発生履歴を調べることで、解析に取り組んだ。その結果、生殖系列で新たに発生する変異のうち、予想以上に多くの割合が胚発生初期に生じていることが明らかになった。また、胚発生期初期に発生する変異は、それ以外の時期に発生する変異に比べて、スペクトラムが異なることが分かった。 (2)生殖系列で発生する突然変異は、後世代の表現型にどのような影響を及ぼすか? 世代を超えて、数多くの変異が蓄積された変異蓄積マウス系統の表現型を調べた結果、生活習慣病に関連すると考えられる血液生化学検査の異常や、血圧、心電図の異常などの発生率が、変異発生の少ない集団に比べて、有意に上昇することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に、本研究を遂行する上で欠くことのできない共同研究者のライフイベントが発生したため、当初の予定に比べて、約半年分の遅れが生じた。共同研究者の職務復帰後、速やかに研究を再開したため、現在では、遅れを取戻し、当初、予定していた通りの進捗状況になった。
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今後の研究の推進方策 |
生殖系列の突然変異の多くが胚発生期初期に生じることは、明らかになったが、これまでの解析では、検出数は限られている。そこで、解析する検体数を増やすことで、性染色体と常染色体の違いや雌雄の生殖系列の違いなど、より詳しく解析を進めていく。表現型への影響の解析も並行して進めていくことで、より包括的な理解を目指す。
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