研究課題/領域番号 |
16H05892
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
浅岡 聡 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 助教 (60548981)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 難分解性有機物 / フミン酸 / フルボ酸 / ヒューミン / 海産性粒状有機物 / 酸化チタン |
研究実績の概要 |
最近の研究で陸域からの栄養塩の流入量の削減のみでは,富栄養化対策として不十分であることが明らかになった.閉鎖性水域の環境改善対策として,硫化水素の発生や海底の貧酸素化をもたらす原因である有機物に富んだへドロ(底泥)の除去,すなわち,底質改善が重要性を増している.近年,陸域からの難分解性有機物の流入量が増えており,海底に堆積した底泥も以前に比べて難分解性となっていると予想される.本研究では(1)閉鎖性水域の底泥に含まれる難分解性有機物を定量して現状を把握する,(2)難分解性の底泥を分解するため,石炭灰を有効利用し,難分解性の底泥を分解する材料を開発し,閉鎖性水域の環境修復に貢献することを目的とする. 平成29年度は閉鎖性水域の底泥に含まれる難分解性有機物の形態分析を行うこと,また,難分解性有機物を分解材の開発のため石炭灰造粒物へ担持する酸化触媒の検討を行うことを目的とした. 難分解性有機物の形態分析:採取した底泥の炭素・窒素の同位体比は-21.41~-20.31‰,5.28~8.79‰であり,底泥の有機物の起源は海洋POMであることが明らかになった.また,底泥のフミン酸,フルボ酸,ヒューミンの組成比は,それぞれ0.4-2.6%, 6.7-16.6%, 81.6-92.9%であり,難分解性有機物の93%がヒューミンであった. 酸化触媒の検討:チタニウムイソプロピオキシドを加水分解しテフロン分解容器内で水熱合成を行った.その後,焼成温度を焼成無しから900℃まで変化させて,LED紫外線ランプ照射下でメチレンブルーの分解実験を行ったところ,焼成温度は600℃が最適であった.今後の底質改善対策として難分解性のヘドロを分解するため石炭灰造粒物への酸化触媒の担持方法を検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
瀬戸内海の底泥に含まれる難分解性有機物のキャラクタリゼーションの定量を終えている.また,難分解性有機物を分解材の開発のため石炭灰造粒物へ担持する酸化触媒の検討については平成29年度から30年度の継続課題であり,酸化触媒の検討の実験を遂行中である.したがって,平成29年度の研究計画は概ね達成している.そのため,概ね順調に研究課題が遂行されていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度から引き続いて,平成30年度は以下の項目について研究を行う. (1)石炭灰造粒物へ担持する酸化触媒の選定と担持条件の最適化 触媒の担持条件を最適化するため,石炭灰造粒物を担体として酸化触媒の候補物質を含浸法によって担持する.酸化触媒の焼成温度,担持率,底泥と材料間の電子伝達を円滑にするために添加するキノン類の添加量を検討する.酸化触媒を担持した石炭灰の酸化能を評価するため,フミン酸溶液に各種の酸化触媒を担持した石炭灰造粒物のプロトタイプを添加して,フミン酸の分解速度を有機炭素濃度の経時変化によって算出する.また,分解溶液中の環境規制元素を分析し,有害な物質が生成ぜす,「環境に優しい」材料であることを確かめる. (2)複合触媒の相乗効果によって酸化力が向上するメカニズムを解明 石炭灰造粒物に担持した酸化触媒が複合触媒として機能し,相乗効果によって酸化力が向上する機構を明らかにするため,X線吸収微細構造法により担持した酸化触媒の価数変化を分析する.
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