本研究は既存のリサイクル技術では再資源化困難なプラスチック/木質バイオマス混合廃棄物を、高付加価値化合物に転換する新規熱分解プロセスの確立に向けて、未だ明らかとなっていない、プラスチック/木質バイオマスの共熱分解機構および両物質間に生じる相互作用を解明することを目的としている。 これまでポリエチレン(PE)と木質バイオマス主要3成分(セルロース・ヘミセルロース・リグニン)の低速・急速共熱分解を実施してきたが、今年度は、PEに次ぐ需要のポリプロピレン(PP)と木質バイオマス主要3成分との共熱分解反応を実施し、その結果、PPにもPEと同じくコークやワックス成分を減少させる効果があることが確認された。相互作用は、特にセルロース由来の熱分解生成物との間で確認され、主な相互作用は、プラスチックからの水素供与および溶融プラスチックによるバイオマス熱分解生成物の凝集抑制効果であることが示唆された。その効果を検証するため、溶融PE中で広葉樹ブナの熱分解試験を実施したところ、凝集しやすいレボグルコサンやアルキル鎖に不飽和結合を有するメトキシフェノールの収率が増加したことから、プラスチックによるバイオマス成分の分散効果も確認された。 さらに、ある程度高温における急速共熱分解反応では、シナジー的にガス成分が促進される相互作用が存在することがこれまでの研究で明らかになった。そこで今年度は、実廃棄物として、サトウキビの搾りかす(バガス)と混合プラスチック(PE:PP:PS:PET:PVC=33:23:22:17:6)から効果的にガス回収するための共熱分解にもトライアルした。
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