本研究は、がん患者のエネルギー代謝変化およびがん悪液質における栄養素代謝変化の解明を目的とする。がん患者の栄養不良は、1.エネルギー不足による栄養不良 2.がん悪液質 の大きく2つが考えられているが、有効な栄養管理法は確立されていない。本研究では、1.間接熱量測定により、がん患者の安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure; REE)および呼吸商を測定し、エネルギー代謝変化を解明する。また、2.血清メタボローム解析により、がん悪液質に特異的な栄養素代謝変化を網羅的に探索する。得られた結果と、治療中の栄養投与量および体組成変化との関連を解析することで、がん治療中の至適投与栄養量を検討する。さらに、悪液質の代謝変化に焦点を当てた新たな栄養管理法への展開を目指す。 本年度は体制整備が主となった。必要機材として間接熱量計および多周波生体電気インピーダンス法による体組成計を選定・購入した。健常者12名で予備測定を実施し、測定条件を検討した。 健常者12名の測定結果、Harris-Benedict式より年齢、性別、身長、体重から推定した基礎代謝量(basal energy expenditure; BEE)とREEを比較すると、REE/BEE=0.88±0.55であり、健常者においては、実測安静時エネルギー消費量は、予測基礎代謝量より少なかった。除脂肪量(fat free mass; FFM)からCunninghamの式より算出した基礎代謝量(basal metabolic rate; BMR)とREEを比較すると、REE/BMR=0.99±0.05であり、健常者においては、REEはBMRとほぼ等しかった。がん患者では現在6名の測定を実施済である。今後、がん患者において安静時エネルギー消費量および栄養素代謝がどのように異なるか検討をすすめていきたい。
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