がん患者のエネルギー代謝変化およびがん悪液質における栄養素代謝変化の解明を目的とし研究をすすめてきたが、血液サンプルの入手が困難であり、メタボローム解析を行うことができなかった。そのため、間接熱量測定による安静時エネルギー消費量(REE)の検討および、カルテ調査により悪液質患者と非悪液質患者の治療中栄養投与量および体組成変化との関連を解析した。 まず、頭頸部癌患者30名と健常者20名のREEを実測し、Harris-Benedict式から推定した基礎代謝量(BEE)とREEを比較した。頭頸部癌患者30名のREE/BEEは1.02であり、健常者20名の0.89に比し、有意に高かった(p<0.01)。 次に、初回化学放射線療法目的に入院した頭頸部癌患者78名の解析を行った。Fearonらの診断基準で悪液質に該当した患者は24名(31%)、非悪液質は54名(69%)であった。全症例に栄養サポートチームが介入し、治療中に必要栄養量を充足できるようサポートした結果、治療中の体重変化率は、悪液質群-6.2%、非悪液質群-5.6 %と有意差はなかった(P=0.4)。治療中のエネルギー投与量/治療前体重は悪液質群で28.0kcal/kg、非悪液質群で25.4kcal/kgと悪液質群で有意に多かった(P=0.01)。78名のうち、REEを測定できた24名の解析の結果、悪液質群(7名)のREE/BEEは1.08、非悪液質群(17名)では1.01であった(P=0.1)。REE/治療前体重は悪液質群で24.8kcal/kg、非悪液質群で22.2kcal/kgであり、悪液質群で有意に高かった(P=0.01)。以上より、悪液質患者ではREEが亢進しているが、亢進分のエネルギーを充足することで治療中の体重減少が抑えられる可能性が示唆された。
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