最近、長鎖奇数鎖脂肪酸(Odd Chain Fatty Acids: OCFAs)は疫学研究によって慢性炎症や肥満・糖尿病を抑える新たな機能性脂肪酸としての可能性が示唆されている。しかし、現在までにOCFAsの機能性研究はまったくといって無いに等しく、詳細な抗炎症作用機序や生活習慣病との関わりについてはほとんどわかっていない。そこで本研究では、OCFAsであるヘプタデカン酸(C17:0)、ペンタデカン酸(C15:0)に着目し、抗炎症作用・抗生活習慣病作用機序の解明を試みている。 令和元年度では、H30年度に行ったOCFAsによる抗炎症作用機序につながるOCFAsの生体内でのターゲット遺伝子の同定をアシル化タンパク質の探索ができるAcyl biotin exchange (ABE) 法で探索した結果、600以上のOCFAsターゲット候補タンパク質を同定することが出来た。令和元年度ではそのうち、炎症シグナルに関連するタンパク質をピックアップし、siRNAを用いた遺伝子発現抑制によってOCFAsの抗炎症作用機序のメカニズムの解明を行った。OCFAsのアシル化が確認できたタンパク質のうち、NFκBシグナルに関与するTraf3に着目した。Traf3をノックダウンするとOCFAsによるIL-6産生抑制効果は減弱したもののすべてをキャンセルするような関与は認められなかった。現在、その他候補タンパク質の関与について詳細に調べている。今後、さらなる詳細なメカニズムの解明を試みるとともに炭素鎖1の違いが機能性に及ぼす影響について調べていく。
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