本課題の目標である,好感度を評価し改善するシステムのプロトタイプを構築し,有効性を評価した.一連の評価により,好感度に関連するパラメータがいくつか得られた.具体的には,声の大きさ,高さ,間の取り方,声の明るさ,イントネーションの大きさ,話速を変化させることで,好感度への影響が認められた.これらのパラメータの制御を実現するため,Vocoderの性能を改善しつつ,処理速度を向上させることで分析にかかる時間的なコストを削減した.Vocoderでは,声の明るさ(音色)以外のパラメータの制御は容易に行える.一方,音色については加工の程度により話者性が損なわれるため,話者性を維持しつつ明るさを改善するための信号処理理論を構築した. 構築したシステムでは,リアルタイム処理を実現するため,時間的な変化を含まない高さ,明るさ,イントネーションの大きさを自由に制御できるように実装した.複数の発話者を対象として,それぞれどの程度変化させることで好感度が改善するかについて評価した.評価の結果,女性の発話については,地声よりも5~8%程度高さを向上させることで話者に依存せず好感度が改善することが示された.一方,男性の発話では,話者により適切な変化量には差があり,全体的には,一般的に平均値とされる高さに近づける傾向が確認された.明るさについては,性別・話者によらず地声より明るくする方向で好感度は改善し,改善量は高さの変化量と概ね比例することが示された.イントネーションの大きさについては,性別・話者によらずやや大きくすることで好感度が改善されるが,高さや音色との相関関係については認められなかった. これらの結果を活用し,入力された音声から好感度を改善するために重要な箇所や特徴を検出し,改善を促すためのシステムのプロトタイプを実装した.実装したシステムについて,実環境においても動作することを確認した.
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