研究課題
細胞内因性収縮力を司るアクチンストレスファイバーの収縮動態調節機構の解明と、生細胞内でアクチンストレスファイバーが発生している張力を可視化する実験系の開発を目的として、本年度は以下の研究を行った。アクチンストレスファイバーの分子構造は、骨格筋に見られるサルコメア構造と同等と考えられモデル化されているが、その詳細は依然として不明な点が多い。特に、サルコメア内に見られるコネクチン分子(Z盤を構成するα-アクチニンと、ミオシンフィラメントを結合)が非筋細胞内のアクチンストレスファイバーに存在するか不明である。そこでコネクチン様分子がストレスファイバーに存在するか確認するため、ミオシンATP加水分解阻害薬ブレビスタチンを用いて収縮動態観察および構造変化観察を行った。培養平滑筋細胞から単離したアクチンストレスファイバーにATPを投与し収縮させた後、ブレビスタチンを投与すると収縮速度が有意に減少した。ブレビスタチン投与によりミオシンは、アクチンからの解離が促進されたためと考えられる。また、ミオシンを蛍光観察しながら同様の実験を行ったところ、ミオシンはストレスファイバーからほぼ解離することなく存在し続けていた。つまり、ミオシンはアクチン以外のストレスファイバー構成分子と結合している可能性が考えられる。今後、ストレスファイバーを構成する分子を質量分析により網羅的に解析していく予定である。また、ストレスファイバーを構成する非筋II型ミオシンIIAに対し、1アミノ酸変異を導入したときの細胞収縮に及ぼす影響について解析を行った。細胞収縮の評価には、特殊処理により透明弾性ゲルの変形を可視化できる培養基板の改良を行い、本実験に用いた。な様々な疾患でミオシンIIAによく見られる変異I1816VおよびE1841Kに着目して解析したところ、細胞形態に差はなかったもののE1841Kでは有意に収縮力が減少することを見出した。
3: やや遅れている
明視野観察だけで細胞収縮を高効率に評価できる特殊基板の改良を行い、感度を向上させることによって、非筋II型ミオシンIIAの1アミノ酸変異による細胞収縮能の低下を見出すことができ、論文として発表することができた。また、アクチンストレスファイバーの構造に関して、コネクチン様タンパク質の存在を示唆する結果が得られている。一方、バイオセンサーに組み込む候補分子の探索を続けているものの、まだ絞り込めていない状況であり、この点について進展がやや遅れている。
引き続き、ミオシン調節軽鎖リン酸化特異的に結合している分子・ペプチドを探索し、適宜バイオセンサーを構築、評価を行っていく。並行して、単離アクチンストレスファイバーの収縮試験を行い、これまでに明らかにされていない力学的性質と構造に関与する分子の特定と、変異体が力学的性質に与える影響を評価する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Journal of Biomechanical Science and Engineering
巻: 12 ページ: 16-00670
10.1299/jbse.16-00670
Development, Growth & Differentiation
巻: 59 ページ: 423-433
10.1111/dgd.12379
http://mbm.me.es.osaka-u.ac.jp