アクチンストレスファイバーの分子構造は、骨格筋に見られるサルコメア構造と同等と考えられモデル化されているが、その詳細は依然として不明な点が多い。 そこでアクチンストレスファイバの高次構造に着目し研究を行った。原子間力顕微鏡、電子顕微鏡による高分解能イメージング、さらには細胞から抽出した1本のアクチンストレスファイバーの引張試験、およびATP投与による収縮試験を行った。その結果、アクチンストレスファイバーはねじれのある高次構造を有していることが明らかとなった。ねじれ構造の力学モデルを考えることで、アクチンストレスファイバーに短縮する方向にひずみが負荷されると、ねじれ構造が容易に引き剥がれてしまうことが明らかとなった。これは細胞内でアクチンストレスファイバーが圧縮される方向の変形が負荷されると、速やかに束構造が緩み脱重合反応を促進する役割があると考えられた。 また、ミオシン調節軽鎖のリン酸化状態と細胞形態、運動との関連を明らかにすることを目的として、収縮制御に関与するアミノ酸残基の変異体を用いて、疑似低収縮、疑似高収縮、通常状態(野生型)、の3状態の細胞株を作製し、ライブイメージングを行った。主成分分析を用いて各変異体を特徴づけるパラメータの抽出を行った。低収縮状態では複雑な形態を示し、収縮性も低かった。一方、高収縮状態では比較的丸い形態を示し、ほとんど移動しなかった。通常状態(野生型)では、高収縮状態と低収縮状態の両方を行き来し、時間的に異なる挙動を示すことが明らかとなった。
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