• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実績報告書

肝細胞-内皮細胞索状組織移植による肝小葉構造を模倣した立体ヒト肝臓の創製

研究課題

研究課題/領域番号 16H05908
研究機関長崎大学

研究代表者

堺 裕輔  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (10608904)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード肝細胞 / 内皮細胞 / 肝臓 / アレイ化 / 再生医療
研究実績の概要

皮下におけるヒト肝臓の構築は、低侵襲性と高い安全性を両立した画期的な移植再生治療となり得るが、肝細胞の立体組織化と皮下生着は極めて困難である。本研究では、密に凝集させた肝細胞パターン作製技術と血管内皮細胞ネットワーク構築技術を融合させ、肝小葉構造に基づき肝細胞と内皮細胞を交互に配列・組織化したヒト肝細胞-内皮細胞索状組織(AHET)を作製することを目指している。
平成28年度に作製した多数の貫通孔を持つシリコーンフィルムをコラーゲンコーティングした温度応答性培養皿(UpCell)に貼り付け、培養器材を作製した。初代ヒト肝細胞を4.5×10^4 cells/cm^2で播種することによって、貫通孔底面に良好に接着し得た。培養3日目にシリコーンフィルムを除去した後、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を5.2×10^4 cells/cm^2で播種し、初代ヒト肝細胞-内皮細胞索状パターニングを作製した。培養6日目にヒト脂肪細胞由来幹細胞(hADSC)を3.1×10^4 cells/cm^2で播種すると、HUVECの支持細胞として機能し、HUVECが管腔様構造を形成した。温度を20℃に低下させると細胞組織体として回収することが可能で、肝細胞-内皮細胞索状組織(AHET)を作製し得た。現在、SEM及びTEMによる解析を進めている。
CRISPR-Cas9システムを利用して、Fah遺伝子のExon 9をノックアウトし、高チロシン血症Ⅰ型重度免疫不全マウス(Fah(+/-)/NSGマウス)を作出した。ジェノタイピングの結果、6種類の欠損パターンが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成29年度は、肝細胞-内皮細胞索状組織(AHET)を作製することを目指した。具体的には、平成28年度に作製したシリコーンフィルムを利用して、初代ヒト肝細胞とHUVECの索状パターニング培養が可能であった。hADSCを用いることによって、HUVECが管腔様構造を形成する特徴的な現象を確認した。また、AHETを回収することが可能であり、予定していたSEM及びTEMによる解析を進めている段階である。詳細な解析に関しては、やや遅延している。
一方、平成30年度に実施予定であった肝障害モデルマウスの作製に関して、CRISPR-Cas9システムを利用して高チロシン血症Ⅰ型重度免疫不全マウス(Fah(+/-)/NSGマウス)を既に作出した。

今後の研究の推進方策

平成29年度に作製した間葉系幹細胞(ADSC)を含む肝細胞-内皮細胞索状組織(AHET)の特徴解析を行う。Live/dead染色による生存評価、免疫組織化学染色を利用したアルブミン(肝細胞)とCD31(内皮細胞)の共染色による肝細胞-内皮細胞索状構造解析を行う。ELISAやリアルタイムPCR等を利用し、尿素合成(アンモニア除去)や凝固因子産生等の肝機能、毛細胆管やトランスポーター等の肝特異的構造、HIF1Aや乳酸合成等の酸欠因子を評価する。細胞間接着、細胞極性、内皮細胞の小孔等の微小構造解析は、TEMやSEMを用いて行う。培養培地にVEGFを添加し、内皮細胞に小孔を作製する。肝小葉構造を模倣した肝細胞-内皮細胞索状構造や高い肝機能発現を有することを明らかにし、AHET作製技術を確立する。
現在、保有している高チロシン血症Ⅰ型重度免疫不全マウス(Fah(+/-)/NSGマウス)はヘテロ欠損であるため、ホモ欠損マウス(Fah(-/-)/NSGマウス)を交配により作出する。Fah(-/-)/NSGマウスは、ニチシノンの経口投与により維持する。AHETをFah(-/-)/NSGマウスの皮下に移植して生体内での拡大培養を行い、皮下肝臓の創出を目指す。形成したヒト肝組織を解析し、肝臓組織と比較する。免疫化学染色やTEM、PCR等を利用し、複雑な肝臓の構造、多岐にわたる肝機能発現、ゾーニングが再構築されているかを明らかにする。皮下での拡大培養が困難である場合、肝被膜上や腎被膜下、大網等に移植して実施する。最終的に、Fah(-/-)/NSGマウスが延命し得ることを実証する。用いる肝細胞は、初代ヒト肝細胞を軸として、初代ラット肝細胞、HepaRG細胞、iCell Hepatocytes、iCell Hepatoblats等を用い、技術の確立と最適な細胞源を明らかにする。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] In vivo construction of liver tissue by implantation of a hepatic non-parenchymal/adipose-derived stem cell sheet2018

    • 著者名/発表者名
      Fujii Mio、Yamanouchi Kosho、Sakai Yusuke、Baimakhanov Zhassulan、Yamaguchi Izumi、Soyama Akihiko、Hidaka Masaaki、Takatsuki Mitsuhisa、Kuroki Tamotsu、Eguchi Susumu
    • 雑誌名

      Journal of Tissue Engineering and Regenerative Medicine

      巻: 12 ページ: e287~e295

    • DOI

      doi: 10.1002/term.2424

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Spontaneous hepatocyte migration towards an endothelial cell tube network2018

    • 著者名/発表者名
      Baimakhanov Zhassulan、Sakai Yusuke、Yamanouchi Kosho、Hidaka Masaaki、Soyama Akihiko、Takatsuki Mitsuhisa、Eguchi Susumu
    • 雑誌名

      Journal of Tissue Engineering and Regenerative Medicine

      巻: 12 ページ: e1767~e1771

    • DOI

      doi: 10.1002/term.2577

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Controlled cell morphology and liver-specific function of engineered primary hepatocytes by fibroblast layer cell densities2018

    • 著者名/発表者名
      Sakai Yusuke、Koike Makiko、Kawahara Daisuke、Hasegawa Hideko、Murai Tomomi、Yamanouchi Kosho、Soyama Akihiko、Hidaka Masaaki、Takatsuki Mitsuhisa、Fujita Fumihiko、Kuroki Tamotsu、Eguchi Susumu
    • 雑誌名

      Journal of Bioscience and Bioengineering

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      doi: 10.1016/j.jbiosc.2018.02.006

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 細胞シートによる消化器の創傷治癒と機能性臓器の作製2018

    • 著者名/発表者名
      堺 裕輔、江口 晋
    • 雑誌名

      膜

      巻: 43 ページ: 34~39

    • DOI

      doi.org/10.5360/membrane.43.34

  • [雑誌論文] 細胞を用いた肝再生医療の最前線2017

    • 著者名/発表者名
      岡田 尚子、堺 裕輔、江口 晋
    • 雑誌名

      PHARMSTAGE

      巻: 17 ページ: 10~16

  • [学会発表] 効率的・移植可能な肝胆膵領域での再生医療2018

    • 著者名/発表者名
      江口晋、黄宇、堺裕輔
    • 学会等名
      第17回日本再生医療学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] Unique cell morphologies and liver-specific gene expressions of chemically-induced liver progenitors2018

    • 著者名/発表者名
      Yu Huang、Yusuke Sakai、Takanobu Hara、Takeshi Katsuda、Takahiro Ochiya、Susumu Eguchi
    • 学会等名
      第17回日本再生医療学会総会
  • [学会発表] 細胞シート工学を利用した血管網を有する皮下培養型ヒト肝組織作製2017

    • 著者名/発表者名
      堺裕輔、高槻光寿、江口晋
    • 学会等名
      第103回日本消化器病学会総会
  • [学会発表] 孔貫通型シリコーンフィルムを利用した肝類似パターニング2017

    • 著者名/発表者名
      久賀千尋、堺裕輔、中澤浩二、江口晋
    • 学会等名
      第54回化学関連支部合同九州大会

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi