| 研究課題/領域番号 |
16H05909
|
|---|
| 研究機関 | 東京女子医科大学 |
|---|
研究代表者 |
高橋 宏信 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (00710039)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
| キーワード | 組織工学 / 再生医療 / メカノバイオロジー / 筋組織 / 神経組織 |
|---|
| 研究実績の概要 |
前年度に引き続き、生体の構造（特に配向性）を模倣した筋組織モデルを構築し、力学的刺激（負荷）が組織の成長に与える影響について評価した。特に、継続的な電気刺激条件による筋組織の成熟化手法について詳細に検討した。電気刺激条件としては、電圧10 V、パルス頻度1 Hzで1時間継続して刺激した後3時間休止する条件を繰り返し行った。パルス幅を3ミリ秒として刺激を行った結果、電気刺激を与えないコントロールサンプルと比較して収縮挙動が十分に大きくなることを明らかにした。また、収縮能以外の評価項目として筋線維の構造について評価したところ、運動負荷2週間後にはコントロールサンプルと比較して顕著に太い筋線維ができることがわかった。以上の結果から、適度な運動負荷により構造的・機能的に筋組織を成熟させる手法を確立した。また、筋収縮を持続して行うことで筋組織から産生されるIL-6が増大することがわかった。この結果は、運動に伴い内分泌組織として筋組織が応答する生理的メカニズム解明に利用できることを期待させるものであった。また、筋組織と線維芽細胞を共培養したところ、運動により組織全体が伸縮することで線維芽細胞も刺激を受け、線維芽細胞が産生するVEGFの量がそれに伴い増大することも確認した。このような異種細胞の協同的な反応に注目することで、より複雑な共培養組織を対象とした生体に近いレベルでのメカノバイオロジーを追究できると考えている。
以上のように、メカノバイオロジーの観点から筋組織への負荷と成長に関する知見を得るための組織作製技術および評価システムを確立することに成功した。次年度はさらに重量負荷等の異なる力学負荷が組織の成熟度に及ぼす影響について検討する。最終的には、それらの知見を統合的に評価することでメカノバイオロジーの視点から組織モデルとしての有用性について検討していく予定である。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
収縮能を有する骨格筋組織を安定的に作製する技術をすでに確立しており、さらに電気刺激により継続的に運動させることで力学的負荷を与える手法も構築している。この手法を基盤として組織の成熟化を促進する最適な電気刺激条件を見出しており、メカノバイオロジーの観点から組織の成熟化を捉えることに成功している。さらに、異種細胞との共培養に着目した結果も一部得られており、さらなる展開として神経細胞の導入にも着手している。これまでとは異なる種類の力学的負荷として重量負荷培養システムを構築しており、現在このシステムを用いた研究も進行中であることから、研究計画に沿って順調に進行していると考えている。
|
| 今後の研究の推進方策 |
重力負荷が筋組織の増殖・分化に与える影響について一部結果も出てきており、運動負荷とは異なる影響を示唆する結果も得られている。このような負荷の種類によって組織成熟化への影響が異なることに着目しながら研究を進めることで、力学刺激の影響をより詳細に検討する予定である。特に、組織の成長と同時に筋委縮等のメカニズム解明および治療法の開発にも繋げることを意識して研究を進める。また、共培養組織を対象とすることで力学刺激による異種細胞間の相互作用についても把握すべく視野を広げるため、神経組織の導入についても引き続き検討していく予定である。
|
