研究課題/領域番号 |
16H05910
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田村 篤志 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (80631150)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シクロデキストリン / ポリロタキサン / コレステロール / 動脈硬化症 / マクロファージ / 炎症 |
研究実績の概要 |
動脈硬化症は心疾患、脳血管疾患へと発展する死亡リスクの高い疾患である。本研究では、β-シクロデキストリン(β-CD)空洞部にポリマー鎖が貫通した構造の細胞内分解性ポリロタキサン(PRX)による動脈硬化症治療について検討する。平成28年度は、マクロファージ様細胞に対する分解性PRXの作用について検討を行った。具体的には、酸化LDLなどを作用させたマクロファージ様細胞に対して細胞内分解性ポリロタキサンを作用させた際の、ステロール含量や遺伝子発現の解析を行った。分解性PRXとして、環状分子にβ-CD、軸高分子にPluronic P123、酸分解性の封鎖基にN-triphenylmethyl基を用いたPRXを用いた。本PRXは生理pH環境では長時間安定であるが、リソソームなどの酸性環境(pH 5程度)では封鎖基が脱離し、PRX構造が崩壊する。また、通常PRXは水に不溶であるため、2-(2-hydroxyethoxy)ethyl carbamate(HEE)、あるいは2-[2-(2-methoxyethoxy)ethoxy]ethyl carbamate(MEEE)をβ-CDに修飾することで水溶性を付与したPRXを合成し、研究に使用した。 このような研究の過程で、PRXはリポ多糖などによる炎症刺激に対して、炎症反応を抑制することがマクロファージ様細胞を用いた実験で示唆された。また、このような作用はβ-CD誘導体や、非分解性PRX、α-CD含有分解性PRXでは認めることができず、PRXの抗炎症作用には、細胞内でのβ-CDの放出が必須であることが明らかとなった。当初想定していた作用とは異なるものの、動脈硬化症の発症には局所の炎症が関与することより、PRXによる抗炎症作用を通じた動脈硬化症の予防・治療において非常に有望な作用であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度の研究により、ポリロタキサンが炎症反応に対して想定外の作用を示すことを明らかにした。当初想定していた実験内容とは異なる部分もあるものの、ポリロタキサンによる動脈硬化症予防・治療という観点でみると、当初の計画以上に研究が進んでいると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究により明らかになったポリロタキサンによる抗炎症作用について、作用機序を分子生物学的な見地に立って明らかにする必要がある。また、ポリロタキサンによる動脈硬化症の予防・治療の可能性をモデルマウスを用いた実験により明らかにする。
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