研究課題/領域番号 |
16H05912
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大嶋 佑介 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (10586639)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ラマン分光 / 骨粗鬆症 / 軟骨変性 / がん転移 |
研究実績の概要 |
がん、糖尿病や骨粗鬆症などの生活習慣病は依然として増加傾向にあり、新たな診断・治療法の開発が急務である。近年これらの疾患の多くにおいて、細胞のみならずその周辺の細胞外マトリクスや微小環境の異常が疾患の発症から悪性化まで広く影響を与えることがわかってきた。しかし、細胞と細胞外マトリクスの相互作用、細胞外マトリクスの量的・質的変化を検出・評価できる手法はほとんど見当たらない。これまでに第2高調波発生(SHG)などの非線形光学効果を利用したイメージング技術や生体分子の振動状態に基づくラマン分光分析技術の開発・応用を行ってきたが、これらをさらに開発・高度化することによって、生体組織深部の細胞観察や細胞外マトリックスを構成するコラーゲンの量的・質的変化の検出・評価が可能になり、将来の組織・病理学診断法としての応用が期待される。本研究では、ラマン分光分析を基盤とする最先端の光学技術を融合した革新的顕微鏡システムを開発し、細胞のみならずこれまで着目されてこなかった細胞外マトリックスの病的変化を解析できる新しいコンセプトの医学・医療応用ツールを提案することを目的とし、本年度においては無染色で細胞の形態や分子の局在、組成・構造変化などを可視化するラマン顕微鏡システムを構築し、がん転移モデルおよび骨軟骨疾患モデル動物の計測を実施した。その結果、細胞外マトリックスの分子組成変化に着目した解析によって、疾患特有のスペクトル変化を捉えることに成功した。これらの成果を踏まえて、ヒト検体の計測にも着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
生体組織計測に特化した顕微ラマン分光システムを独自に構築し、かつ疾患モデルマウスを作製し、細胞外マトリックスを中心とした生体組織内の分子組成の量的・質的変化を統合的に解析し、既存の組織・病理学的所見と比較検討した結果、骨粗鬆症、変形性関節症およびがん転移巣において、これらの疾患の特徴を示すラマンピークの変化を見出すことに成功したため、想定よりも早く臨床応用のための第一歩であるヒト検体の計測まで実施するに至ったから。
|
今後の研究の推進方策 |
新たに構築した顕微ラマン分光システムによって得られた結果を蓄積し、ラマンスペクトルデータベースを構築するとともに、生体試料のラマン分光計測に特化した仕様の検出光学系およびラマン分光器の改良を行う。細胞外マトリックスの主要な構成分子に帰属されるラマンスペクトルの形状およびピークに注目して,疾患特異的なピークの高感度検出を達成するため、励起波長の最適化、および計測手法の検討を行い、最終的にはヒトへの応用、低・無侵襲的な検査手法としての将来性を見込んで、病理診断や臨床現場での実用化につなげていく。
|