他者の表情や行為からその人の感情や意図を理解することは、我々が社会生活を営む上で必須であるが、その認知機構は殆ど解明されていない。本課題は、他者理解能力の一つである表情認知に焦点を当て、その認知機構の解明を目指す。昨年度は「運動システムが他者表情の認知に関与する」という仮説の検証を目的とし、実験群として顎骨切除術の術前・術後3年間までの顎変形症患者とコントロール群の健常者を対象にし、他者表情に対する認知能力を調べる行動実験を行った。昨年10月から実験補助員を雇用し、大規模実験を開始した。昨年度までに、実験群112人、コントロール群26人を対象に実験を行った。現在までのところ、手術とその後のリハビリによって顔運動システムが改善した術後患者の方が、術前患者に比べて他者表情判断の成績が良い傾向が認められている。しかし、患者間で症状にばらつきが大きいため、引き続き実験データを増やす必要がある。また、患者群に比べてコントロール群のデータ数が少ないため、データを増やし、患者群と比較する必要がある。
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