研究課題
若手研究(A)
本課題は、他者動作理解能力の一つである表情認知に焦点を当て、その認知機構の解明を目指した研究である。「顔の運動システムが他者表情の認知に関与する」という仮説を検証するために、術前・術後の顎変形症患者と健常者を対象に、表情認知能力を調べた。顔の運動システムに異常を有する術前患者は、手術とリハビリによって運動システムが改善した術後患者や健常者に比べて、表情認知能力が劣る傾向を示した。さらに、本課題の研究枠組をより一般化させ、「自分の運動システムが他者の運動認知に関与する」ことを示す成果を得た。
神経科学
本研究成果は、運動システムが他者表情の認知に関与する因果的証拠を与え、認知・社会神経科学分野に大きな学術的な意義をもたらす。また、術前から術後3年に及ぶ顎変形症患者の認知能力の調査データは、歯科学的観点から非常に有益である。さらに、本研究成果は、歯科矯正手術はただの美容整形ではなく、認知機能の変容を導くことを示唆するという点において、社会的意義を有する。