本研究では,速筋線維が優先的に動員される「最大努力での繰り返しの筋力発揮」に伴う筋疲労,及び,遅筋線維が重要な役割を果たす「最大下努力での持続的な筋力発揮」に伴う筋疲労を想定し,これらの筋疲労課題前後の個々の筋の疲労度合を,超音波剪断波エラストグラフィにより定量した骨格筋内部の硬さ(剛性率)を用いてモニタリングする.平成30年度は,「最大下努力での持続的な関節トルク発揮による筋疲労課題」及び「最大努力での繰り返しの関節トルク発揮による筋疲労課題」の双方に取り組んだ. 最大下努力の疲労課題に関しては,被験者を若年男性24名として,膝関節伸展筋群を対象に,全力の40%という中強度の力発揮を疲労困憊まで継続させた.その際の筋疲労抵抗の個人差について,大腿直筋,内側広筋及び外側広筋の3筋の疲労度合の個人差から検討した.その結果,一部の筋では有意な関係性が観察されたものの,そもそも,疲労に伴い筋が硬くなる,という前提が崩れていた.一方,最大努力の疲労課題に関しては,被験者を若年男性36名とし,足関節底屈筋群を対象に,全力での力発揮を断続的に40回×2セット実施させた.その際の筋疲労抵抗の個人差について,腓腹筋内側頭及び外側頭,ヒラメ筋の3筋の疲労度合の個人差から検討した.ただし,こちらの課題に関しても同様に,疲労に伴い筋が硬くなる,という前提が崩れていた.このように,平成28年度及び平成29年度(どちらも低強度の力発揮での疲労課題)と結果が異なった理由として,中強度以上では,筋温や血流の影響が筋剛性率に及ぼす影響が大きく,疲労度合の評価が難しかったことが予想される. 得られた研究成果については,現在,投稿論文を執筆している.また,2019年の夏・秋には国際会議・国内学会大会での発表を予定している.
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