環境応答転写因子Nrf1と老化の関連について個体を主体として解析を進めてきた。特に老化モデルマウスKlothoにおいて、Nrf1の発現量を是正すると、生育寿命が変化することを見出した。昨年度に整備した、小型魚類システムでこれまでに見出した9つの老化サロゲート遺伝子について過剰発現、および欠失体の作出を試みてきた。過剰発現体すなわちトランスジェニック魚については、野生型よりも発現は上昇していることが確認できたが、寿命制御の効果については、個体差が大きく、さらなる解析が必要である。欠失体については、すべての遺伝子について、遺伝子重複の問題を解決できておらず、完全欠失体を得られたのは、2つの遺伝子のみについて樹立した。これらの欠失体は著名な体幹形成に支障を生じており、現在、代謝物の解析を進めている。 また、Nrf1の発現調節で介入したKlothoマウスと3年以上飼育した加齢マウスの低分子代謝物の変動解析を実施した。共通して変動が観察されたのはポリアミン代謝経路であり、本研究では、アクロレインに着目した解析をした。その結果、どちらもアクロレインタンパク質が蓄積していることが明らかになった。詳細な遺伝子発現変動解析の結果、KlothoマウスにおいてはSmoxの寄与が大きいことが明らかとなってきたが、加齢マウスにおいては、Smoxの発現変動によらない経路で、アクロレインが変動していることが明らかとなった。現在、遺伝子発現変動解析を通して経路の同定を試みている。また、Nrf1調節化合物についても、寿命延伸効果があることが予備的試験で明らかになってきたが、腎毒性が観察されるので、側鎖を変更した化合物の導入して再解析中である。
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