研究実績の概要 |
本年度は、個人の研究を進めつつ、共同研究を推進した。 個人の研究としては、帝政崩壊期の自由主義系ユダヤナショナリストとシオニストの動向について、前者がパリで刊行していた『エヴレイスカヤ・ネジェリャ』、後者がベルリンで刊行していた『ラスヴェト』などの分析を進めた。 その結果、ポグロムに対する評価が両者で異なり、前者が依然としてロシアにおけるユダヤ人の固有の役割(経済的役割や西欧化推進者としての役割)が存在していることを前提としていたのに対し、後者シオニストにおいては、ポグロムなどの革命前後のユダヤ人に対する暴力を受け、ロシア全般に対する信頼を失っていったことが見て取れた。この成果については、後述の共同研究の成果論集への寄稿論文"From Hyphenated Jews to Independent Jews"としてまとめた。 共同研究としては、まず、2015年に埼玉大学において開催したロシア東欧史・イスラエル史を接続する国際会議"Mediating East European History and Israeli History"の続編として、その際に招聘したケネス・モス・ジョンズホプキンズ大学准教授の主催で同大学で2日間にわたる国際会議"Israel’s East European Lineages: Russian and Polish Jewish History, Zionism, and Israeli Political Cultures"(2016年5月4-5日)に、組織者および総括コメント者として出席した(費用はすべて先方持ちのため、本科研費からの支出はなし)。前会議と本会議の出席者をもとに、論集を編む計画が本年度より本格的に開始し、本年度のうちにある程度の論文を集めることができた。 また、もう一つ、巽由樹子東京外国語大学講師とともに、ロシア帝国における出版活動に関する共同研究を開始した。英語での論集を目指し(すでに出版社とは契約済み)、2017年3月30日に東京大学において、研究会を開催し、批評しあうとともに出版の打ち合わせを行った。
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