研究課題/領域番号 |
16H05930
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鶴見 太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00735623)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | シオニズム / ナショナリズム / アイデンティティ / 帝国 / ロシア / ユダヤ人 / 自由主義 / ポグロム |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、ロシア東欧史とイスラエル史を接続する英語の論集、および、ロシア出版史に関する英語の論集の編集および自身の寄稿論文を完成させることが主な課題であった。 まず、個人の研究としては、本年度は帝国崩壊期のシベリア・極東のシオニズムに関する研究と、ヨーロッパ・ロシア地域のシオニズムに関する研究が主な柱となった。前者においては、帝政期や内戦期初期においては、シベリアやロシア全体との連帯を視野に入れて活動していたシオニストが、ハルビンに移住後は、もっぱらパレスチナや東欧など他地域のユダヤ人を支援することを通じて、自らのアイデンティティを確立している様子がうかがえた。この点は、上記ロシア出版史論集への寄稿論文の核心になる。 後者については、昨年度から引き続きポグロムの影響を解明した。ディアスポラ・ロシア・シオニストの筆頭格の一人J・シェヒトマンは、そのポグロム報告書のなかで、ロシア当局のポグロム暴徒への処罰の弱さを、ポグロム自体への批判的記述とは別に強調している。これは、パレスチナにおけるアラブ人「暴徒」に対するイギリス当局の処罰の不十分さに対する批判と地続きであることがシオニスト機関誌の分析からも浮上した。 もう一つは、社会経済的視点である。それまでロシア帝国の経済における固有の役割を誇っていたユダヤ人が、その役割が失われていくなかで、ロシア経済からの独立を目指すようになったという経路が初期のロシア・シオニスト指導者であったD・パスマニクの議論の分析などから明らかになった。 共同研究としては、ロシア出版史については大半の原稿が集まり、その改訂作業も半数以上を終えることができた。もう一つの論集についても、大半の原稿が改訂作業まで終了し、共編者であるB・ネイサンズ・ペンシルベニア大学准教授とK・モス・ジョンズホプキンズ大学准教授とともに序章の執筆等を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料を分析していくなかで想定していなかった発見があるなど、大きな進展が見られた一方で、昨年度に引き続き、家庭の事情で海外に行く回数や日数が制限されたことから、海外に関する調査や連携は大きく進展しなかったため、差し引きでこのような評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は二つの論集を完成させるとともに、以上の成果の萌芽を世に問う教養書の執筆・出版を計画している。また、マイノリティが、それが基盤とするより大きな枠組みとどのような関係性を持つのかということに関して、暴力と経済という二つの側面から議論する国際会議の開催を予定している。
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