研究課題/領域番号 |
16H05931
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長岡 慎介 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (20611198)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 現代イスラーム経済論 / イスラーム金融 / 伝統制度の再活性化 / 金融資本主義 |
研究実績の概要 |
本年度は、政府や公的イスラーム団体が牽引役となって新しいイスラーム経済実践の取り組みが行われている国の実態解明に重点的に取り組んだ。その先駆例として、トルコ(2016年8月)とマレーシア(2016年2月)で現地調査を実施した。また、2016年9月には、シカゴ大学、米議会図書館にて関連資料の収集を行った。 トルコでは、同国のイスラーム経済研究の拠点の1つであるIstanbul Sabahattin Zaim Universityの研究者の協力を得て、最大都市イスタンブルにて調査を実施した。2016年7月のクーデター未遂の影響でイスラーム銀行の1つが閉鎖に追い込まれたものの、金融セクターを中心としたイスラーム経済の伸張は堅調に続いているだけでなく、現在の金融資本主義化する世界全体のイスラーム経済の実践の動向に抗して、実体経済セクターのリーダーシップによるイスラーム経済の振興がさかんに議論されていることが判明した。 マレーシアの調査では、政府の強力なイニシアティブによって、イスラーム金融が推進されてきたが、その充実したインフラを活用したイスラーム相互扶助団体やイスラーム・ビジネスが近年、同じく政府の強力な支援の下で整備されてきていることが判明した。本研究で焦点を当てた、国内最大規模の相互扶助団体を抱えるスランゴール宗教評議会(MAIS)では、州内のムスリムから徴収したザカート(喜捨)の効率的な配分を実施するために、州を越えた連携が取られ始めていることも明らかとなった。 また、シカゴ大学と米議会図書館で行った文献調査によって、本研究に関わる英語、アラビア語、ウルドゥー語の文献を入手できたことで、イスラーム経済の新実践に関する既存研究のレビューを進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トルコでの調査は政治情勢等によって当初の計画とは若干違う形で実施することになったが、その変更を補ってあまりある成果を得ることができた。また、マレーシアでの調査、アメリカでの文献収集は当初の計画通り実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は今年度同様に現地での調査に力を入れる予定であるが、研究成果の公表・出版に向けて徐々に検討をしていくことにしたい。
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