研究課題
本年度は、草の根の団体や零細中小企業が牽引役となって新しいイスラーム経済実践の取り組みが行われている国の実態解明に重点的に取り組んだ。特に、その先駆例・典型例であるエジプトでフィールドワークを実施した。また、2017年12月には、米議会図書館にて関連資料の収集を行った。長らく独裁体制が続き、貧困層に対する社会福祉政策がほとんど行われてこなかったエジプトでは、ムスリム同胞団が手厚い慈善・相互扶助活動を担ってきた。しかし、アラブの春以降の政変によってムスリム同胞団が社会の表舞台から退いてしまい、その後の公的福祉を補完する担い手については十分に解明されてこなかった。本年度のフィールドワークでは、同胞団以後のイスラーム型草の根福祉の実態について首都カイロの各所でサーベイ調査を行った。本年度の後半には、これまでの研究の中間成果を取りまとめ、国内外の専門と意見交換を行うための比較研究国際ワークショップを京都大学で開催した。本資金では、インドネシアから1名、トルコから2名の研究者を招聘し、イスラーム経済の新実践に係る各国の事例研究の比較検討を行った。さらに、2017年11月には、マレーシア・サラワク州で開催された世界イスラーム経済フォーラムに出席し、イスラーム経済の各国の実践の最前線の状況についての情報収集や人的ネットワークの構築を行った。また、前年度に続いて本研究に関わる英語、アラビア語文献の収集を精力的に行った。
2: おおむね順調に進展している
エジプトでの調査は申請時からの政治情勢の変化によって当初の計画とは若干違う形で実施することになったが、その変更を補ってあまりある成果を得ることができた。本年度は比較研究国際ワークショップの開催組織に時間を割いたため、当初予定していたインドネシアでの調査は、次年度実施することとした。
次年度は、今年度実施できなかったインドネシアでの調査を行い、申請時に予定していた4カ国での調査を完了する予定である(必要に応じて各国で補足調査を行う)。また、第2回比較研究国際ワークショップを海外で実施し、それらをもとに研究成果の公表を英語で行っていくことを計画している。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Stomu Yamash’ta, Tadashi Yagi and Stephen Hill eds. The Kyoto Manifesto for Global Economics: The Platform of Community, Humanity, and Spirituality (Springer)
巻: なし ページ: 395-415
村上勇介・帯谷知可編『秩序の砂塵化を超えて―環太平洋パラダイムの可能性』(京都大学学術出版会)
巻: なし ページ: 221-248
『宗教研究』
巻: 91(2) ページ: 177-200