研究課題/領域番号 |
16H05934
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
近藤 和敬 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (90608572)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ガストン・ミヨー / アナスタシオス・ブレナー / ポール・タンヌリ / 20世紀フランス哲学 / 科学認識論 / 科学史 |
研究実績の概要 |
本研究は、大きく分けて四つの部分課題からなる。以下ではその課題に番号を付して区別する。① 20 世紀前半のフランスにおける古代哲学研究の文献学的調査。② 20 世紀前半のフランス哲学に関連する諸制度の調査。③ 20 世紀後半のフランス哲学における古代哲学研究の影響の文献学的調査。④ 19 世紀のフランス哲学研究における古代哲学研究の導入の背景およびその議論枠組みの調査。以上の研究課題について、特に①と②を優先的に進行させ、その成果を踏まえつつ、③と④の研究を展開する。平成28年度は、計画に基づき以下の作業を行った。 1. ガストン・ミヨーの著作の読解および重要カ所の部分訳の作成。またそこで言及されている重要文献の精査と収集。2.ガストン・ミヨーの研究で近年重視されているAnastasios Brennerらの研究(Science, histoire et philosophie selon Gaston Milhaud, Vuibert, 2009)などに基づき、近年のミヨーおよびその周辺の文脈について資料の収集を行った。3.Brennerらの研究に示唆されて、ミヨーの先駆者としてPaul Tanneryの古代科学史家としての重要性が浮かび上がったため、Tanneryにかんする資料の収集を行った。4.Tanneryの資料を分析していくなかで、ドイツの古典文献学および19世紀中葉のドイツの数学史の展開との関係が浮かび上がり、資料収集のための準備を始めた。5.『道徳形而上学雑誌』の創設にかかわった哲学者たちの関係性およびその政治的文脈について資料調査を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ガストン・ミヨーの研究のほかに、20世紀フランスの学術制度の分析を進める予定だったが、この問題が1870年以降の第三共和政期におけるジュール・フェリー法などに関する教育制度の大きな改革と政治的方向性の変化というものと結びついていることから、調査の範囲が当初の予定よりも拡大したため、多少遅れているが、全体としては修正可能な範囲である。 また、当初予定の文献研究の範囲を超えた関連資料が出てきたため、その処理を優先し、研究会等による情報交換を来年度以降に遅らせているが、これも2年目以降の研究で調整可能な範囲である。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に文献収集を集中して行ったため、問題の所在を研究当初よりも特定することができた。それは1つには、第三共和政期期の教育制度およびその政治的背景と、それが否定的に前提している王政復古期から第二帝政期にかけての教育制度およびその政治的背景である。もう1つは、王政復古期から第二帝政期にかけてドイツ哲学を模範にしたヴィクトール・クザン派によるドイツ哲学の導入と、その後の第三共和政期期にみられるドイツ古典文献学とフランス実証主義の結びついた古代科学史の確立という二重の仕方で見られるドイツ思想界との結びつきである。これらの関係については、今後、ラシュリエ、エミール・ブトルー、その弟子でプラトン研究者のブロシャール、ポール・タンヌリ、ガストン・ミヨーらの仕事の連環を明らかにすることで解明可能であるように思われるので、次年度はこれらの問題について文献調査の方法によってアプローチを試みる。
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