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2016 年度 実績報告書

コミュニティ・スペシフィックを志向するアーティストによる地域創造力の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16H05935
研究機関筑波大学

研究代表者

市川 寛也  筑波大学, 芸術系, 助教 (60744670)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードアートプロジェクト / 地域社会 / コミュニティ / パブリック・アート / 文化行政 / 場所 / 放課後 / 住民参加
研究実績の概要

研究課題として掲げた「コミュニティ・スペシフィック」概念に関する論点整理と実践研究を実施した。当初の研究計画では、平成28年度に実施された「茨城県北芸術祭」と連動したアクションリサーチを行う予定であったが、当該事業が継続性を前提としないイベント型の芸術祭として展開されたため、研究計画を一部変更して遂行した。
本研究における「コミュニティ・スペシフィック」は、従来のパブリック・アートで重視されてきた「サイト・スペシフィック」に対して、近隣住民や興味関心を共有する人々の参加を通じて達成される芸術実践から抽出される概念である。この術語は、美術史家のミウォン・クォンが『One Place After Anothe』の中でアーティストのクリストファー・スペランディオの言葉を引用する形で提示されたものであり、そこでも「サイト」から「コミュニティ」への転回が論じられている。こうした考え方を日本の現代美術の評価軸に援用していくことが本研究の主たる目的となる。この背景には、各地で開催されているアートプロジェクトや芸術祭が「住民の主体性」や「地域文化の多様性」を掲げながら、一方で一過性のイベントとして文化芸術を消費していることに対する批判がある。
初年度の具体的な成果としては以下の二点が挙げられる。①2011年より水戸市内の小学校で実施してきた《放課後の学校クラブ》を踏まえ、放課後子ども教室事業に創造的な活動を取り入れる「放課後アート活動」を水戸市総合教育研究所との協働により推進した。②研究協力者の矢口克信氏とともに、水戸市内の空き家を拠点に「ワシントン現代藝術センター」を設立し、解体されるファッションビルを舞台とする《祭後のバーゲンセール》やワシントン藝術大学校等の企画を通して「地に足の着いたアート」について議論する場を設けた。以上の活動を通して、日常と芸術との関係について研究を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績の概要においても言及した通り、当初の研究計画で想定していた「茨城県北芸術祭」におけるアクションリサーチは行わなかったが、本研究課題を遂行する上で重要な制度設計と拠点整備ができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
制度設計については、水戸市総合教育研究所との協働により、水戸市内の小学校で実施されている放課後子ども教室事業に創造的な活動を取り入れる「放課後アート活動」が始まり、28年度は計4校で事業が実施された。
拠点整備については、研究協力者の矢口克信氏によって「ワシントン現代藝術センター」の環境整備を行い、8月15日に実施した《祭後のバーゲンセール》では、かつての水戸の若者文化の中心地であったファッションビル「サントピア」の解体に際して、往時のバーゲンセールの行列を再現するアートプロジェクトを実施し、200名あまりの参列者を得た。
上記の仕組みや拠点におけるアクションリサーチをもとに、論文発表及び口頭発表を行った。

今後の研究の推進方策

平成29年度より新たな研究機関(東北芸術工科大学/山形県山形市)の所属となったため、これまでに茨城県水戸市で蓄積してきた方法論を応用しながら「コミュニティ・スペシフィック」な芸術実践の有効性を検証する機会としたい。
特に、今年度は研究課題にも掲げている「地域創造力」についてより深く考察を進めていく。そのために、研究協力者の北澤潤氏とともに、これまで水戸市の小学校で行ってきた《放課後の学校クラブ》を山形市内の小学校でも展開し、児童一人ひとりとの対話を通してそれぞれの創造性を引き出すコミュニティ型アートプロジェクトの担い手づくりについて検討していきたい。また、放課後子ども教室事業は全国で行われている施策であるため、水戸市で構築した「放課後アート活動」の仕組みを導入する道筋を探りながら日常の選択肢として「芸術」がある状況をつくりだし、学校関係者への聞き取りからその効果を測定する。
水戸市で拠点整備を行った「ワシントン現代藝術センター」については、研究協力者の矢口克信氏とともに引き続き運営を進め、ワシントン藝術大学校等のプログラムを実施する。また、既に水戸市内の他の物件にも関わり始めているため、点から面へと活動拠点を広げつつ、それにより関わる人々や周囲の環境にどのような変化が生じるのかについてアクションリサーチを継続する。
上記の実践研究と並行して、InSEAにおける口頭発表やドクメンタ等の海外事例調査を通して、地域社会と芸術の関係を国際的な視点からも把握できるように研究の対象を少しずつ拡張していく予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 地域との連携による芸術科工芸の教科としての独自性―全国質問紙調査の分析を通して2017

    • 著者名/発表者名
      市川寛也
    • 雑誌名

      美術教育学研究

      巻: 49 ページ: 49-56

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] コミュニティ・スペシフィックな芸術実践を通した地域創造力の開発―生活の芸術化へのアプローチとして2017

    • 著者名/発表者名
      市川寛也
    • 学会等名
      第39回美術科教育学会静岡大会
    • 発表場所
      静岡県コンベンションアーツセンター(静岡県静岡市)
    • 年月日
      2017-03-29 – 2017-03-29
  • [図書] アートエデュケーション思考―Dr.宮脇理88歳と併走する論考・エッセイ集―2016

    • 著者名/発表者名
      宮脇理(監修)
    • 総ページ数
      428
    • 出版者
      BookWay

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公開日: 2018-01-16  

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